(画像はイメージです/PIXTA)

「相続にはお金がかかる」という事実は、意外にもあまり知られていません。「相続は親の残した財産がもらえる」という認識のみで、「相続税」という存在は知りつつも「一定の財産額以上の富裕層が心配すること」「うちには相続税なんて関係ない」と高をくくり、準備もなく相続を迎える方は多いのです。しかし実際は「認識と違った…」というケースも多く、注意が必要です。ここでは、相続時に発生する主な支払いとして、相続税・代償金・相続手続き費用について見ていきましょう。

相続手続きの盲点…申告の必要性と「相続税」の発生は別問題

まず、相続税についてです。前提として「相続税の申告が必要かどうか」と「相続税が発生するかどうか」は別問題であると覚えておいてください。

 

相続税とは、各自の取得した金額に応じて課されるものですから、相続税申告が必要であっても、相続人にとっては相続税が発生しないということもあり得ます。また、ご両親のどちらがかお亡くなりになり、その配偶者が多額の相続財産を取得する場合、配偶者には特別な控除があることから、相続税が発生しない、というケースもあり得ます。

 

相続税には「基礎控除」という考え方があり、相続財産の額が基礎控除より低ければ相続税の申告の必要なし、高ければあり、ということになります。

 

基礎控除の額は、基本的に「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式をもとに導き出します。

 

しかしながら、そもそも相続財産がどのような範囲のものになるのか、その評価はどうなるのかなど、専門的な判断が求められる場合も多く、これらの判断は税理士等の税務の専門家に相談の上考えていくほうが正確です。

 

無料相談をしている税理士の方もいますし、相続税申告の有無の判断程度であれば、3万円前後で相談に乗ってくれる方も多いようです(※ただし、書類取得等が発生する場合は、別途費用が発生することもあります)。

遺産分割がむずかしい場合に必要になる「代償金」

次に「代償金」です。ある家族の例から考えてみましょう。父亡きあと、母も亡くなり、残された2人の子どもに相続が発生したとします。遺産は、亡き母親が暮らしていた4,000万円相当の実家の土地建物、そして預貯金2,000万円の、合計6,000万円があるとします。

 

子どもの法定相続分は2分の1ずつですから、本来は、合計6,000万円の財産を3,000万円ずつ分割することになります。しかし、1人が4,000万円の実家不動産を相続するとしたらどうでしょう。現金は2,000万円しかありませんので、不公平になってしまいます。

 

そのため、もう1人に「1,000万円」を支払い、バランスをとります。このお金を「代償金」といいます。預貯金や株式などが多い場合は、代償金が発生しないこともありますが、相続財産に不動産が含まれる場合、ほとんどのケースで代償金が発生することになります。

合計すると相当な額に…手続きごとに発生する「諸費用」の問題

じつは、相続手続き自体にも、結構な手間と労力・お金がかかります。

 

相続手続きをおこなうには、まず、亡くなった被相続人と相続人との関係性を戸籍によって示すことが必要です。「相続人は実子だけ」といったシンプルな関係なら、相続人自身が役所等に出向いて戸籍等を取得することも可能ですが、おじおば・いとこといった複数の相続人がいたり、離婚等によって親族関係が複雑になっていたりすると大変です。

 

複数の相続人が絡む場合、戸籍の収集範囲が広くなるばかりか、そもそも誰が相続人にあたるのかわからないというケースもありえます。

 

また、金融機関の残高を把握するにも、本来は「残高証明書」という書類によって、死亡日時点の正確な残高を金融機関に証明してもらう書類を発行します。相続人の全員の同意があれば、この残高証明書の代わりに、通帳の直近の残高などによって残高を把握する方法も取れなくはありません。

 

しかし「親のお金を勝手に引き出した!」「兄だけ父から贈与を受けていた!」など、直近の引き出しが問題になる場合は、一般的に、最低でも過去3年分ぐらいさかのぼって、金融機関の取引履歴を開示することもあります。

 

この手続きは面倒なだけでなく、場合によっては数万円の費用が発生することもあります。その上で、不動産の名義を確認する資料をそろえてはじめて、ようやく遺産の分配を決める「遺産分割協議」に入ることができます。

 

遺産分割協議は、揉めないのであれば、親族の話し合いで内容を取り決めてかまいません。しかし、万一揉めてしまうと大変です。弁護士等の介入が必要な「紛争」になってしまうケースもあるからです。その場合、弁護士費用が発生するのは言わずもがなです。

 

その後、晴れて遺産分割協議がまとまった暁には「遺産分割協議書」という書類を作成し、金融機関での預貯金の解約返金手続きや、法務局での不動産の名義変更手続きが必要になります。これらの手続きを行政書士や司法書士といった専門家に依頼すると、その分の報酬も必要になります。

相続税の納付に相続財産を使うのは難しい

ここまで相続に発生するお金についてお話してきましたが、「相続税」は、相続発生から10ヵ月以内に申告し、納税資金も準備する必要があります。「代償金」や「相続手続きの諸費用」も、相続手続きの完結前、すなわち遺産の預貯金から支払うことがむずかしいケースも多いのです。

 

この点、近年は法律改正があり、預貯金の一部払い戻し制度ができましたが、それを利用するにも、またひと手間かかってしまいます。

保険金の活用で相続手続きを進めることが可能だが、注意点も…

このように、相続手続きにはお金がかかることが多いのですが、比較的解決しやすいのは「保険金の利用」です。

 

保険金で残したお金は「相続財産と別個の財産として、受取人の固有の財産」とされるのが原則です。すなわち、相続財産として預貯金にお金を残していても、相続手続きには利用しづらいですが、保険金として残しておけば、相続手続きの完了前に保険金を受け取ることができ、その金銭によって相続手続きを進めていくこともできるのです。

 

ただし、相続財産のうち、多額の割合を保険金として残そうとしてしまうと「特別受益」と判断され、保険金として固有の財産であることが否定されるおそれもあるため、注意が必要です。

 

以上のように、相続にお金がかかるということは、意外と知られていない事実です。保険金の利用など、前もって相続対策を行っておかないと、相続手続き時にトラブルの種にもなりかねないため、相続対策について考えることは重要だといえるでしょう。

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