FRBのバランスシートを見て思い浮かぶ「2つの疑問」
実際のデータを眺めてみます。2023年1~3月期の四半期会計報告に従うと、FRBは260億ドルのキャッシュフローの赤字を計上しています。
また、直近時点では、週当たり22億ドルのキャッシュフローの赤字を計上しています。バランスシートを削減している途上であるため、毎週数値は変化します。
こうしてFRBのバランスシートや赤字の現状をみると、2つの疑問が思い浮かぶかもしれません。
ひとつは「なぜ、市中銀行準備預金に付利をしたのか?」であり、もうひとつは「残高が2.4兆ドルもあるリバース・レポとはなにものか?」「なぜ、リバース・レポの残高は増えたのか?」です。
今日は、翌日物の資金貸借市場の状況を眺めつつ、1点目と2点目の一部について考えます。
翌日物市場の主要プレーヤーとFRBから得られる金利の関係
まずは、FRBの金融政策オペレーションの「主戦場」である翌日物の資金貸借市場で、どのような主体がどのように取引を行っているのかをみることで、準備預金付利金利やリバース・レポの役割を考えます。
翌日物の資金貸借市場は「レポ市場(有担保)」と「フェデラルファンド市場(無担保)」の2つに分かれます。FRBは、後者のフェデラルファンド金利(無担保翌日物金利)を誘導目標にしています。現在は、このフェデラルファンド金利を「5%~5.25%」のあいだに収めることが目標です。
FRBの資金循環統計(Z.1)に従うと、世界金融危機以降のレポ市場およびフェデラルランド市場における主要なプレーヤー(→ネット・ベース)は[図表4]に示すとおりです。
翌日物レポ市場とフェデラルファンド市場の2つの市場のプレーヤーは日々、互いに相手を見つけ合って資金貸借の取引を行います。ただし、これらのプレーヤーのうち、レポ市場で「資金の借り手」に属しているFRBは資金が不足しているわけではありません。
FRBは「1日の最後に余った資金」をリバース・レポによって翌日物市場から吸収する役割を担っています。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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