超高齢社会 「認知症者が主役」の制度に改めよ
2017年の事件ですが、車いすに年老いた妻を乗せたご主人が、店舗内のエスカレーターから転落し、階下で巻き込まれた歩行者が死亡するという事故がありました。新聞記事などでは、「エスカレーターには車いすで乗らないよう、呼びかけを強化すべき」という論調がみられました。
2019年に起こった池袋での高齢ドライバーによる暴走事故は記憶に新しく、これを機に一定年齢以上の免許返納の世論が一気に高まりました。しかしそれも束の間、返納のペースは下降しており、相変わらず暴走事故は繰り返されています。
こうした報道を見るにつけ私が思うのは、まず発想を根本的に変える必要があるということです。
それは、「事故を起こさないように気をつけて」と呼びかけるのではなく、「事故は起きてしまうという前提で予防策を講じる」ということです。
言い換えれば、「判断力の衰えた高齢者に注意を呼びかけても無意味なのだから、判断力のない状態で起こしてしまう事故トラブルをできるだけ予防できる仕組みを作ろう」となります。
今までの社会は、正常な判断ができる「健常者」が主体であることが前提でした。しかしこれからの社会は「認知症者や要介護者が主役」という真逆の発想から制度を作り変える必要があると思うのです。
もちろん、道路のガードレールや階段の手すりなど、高齢者や障がい者に配慮した工夫は少しずつ導入されてきました。しかし冒頭のような大事故に関しては、より直接的な対処が必要です。
エスカレーターの事故でいえば、写真([図表1])のようなカートの進入を防止するポールを入口に設置することで侵入を防げるでしょう。
高齢ドライバーによる自動車事故に関しては、「スピードが出ない車」の開発や乗車の義務付けを促進すべきです。
法律のあり方そのものも、この超高齢社会では通用しなくなっていると考えることが必要です。