「誰も介護してくれる人がいない」…そんなときどうする?
Lさんは独身で、一緒に暮らしていた母親を特養に入れてから、自分の老後について考えるようになったと言います。
「私はまだ50代ですが、兄弟もおらず、親戚ともすでに縁が途絶えています。年をとってから介護してくれる人もおらず孤独です。老後のことを考えると不安で眠れなくなるときさえあります」。
そんなときにⅬさんが知ったのが身元保証サービスでした。これは入院するときや、老人施設に入居するときなどに求められる身元保証人の役割を提供してくれるサービスです。
一般的には家族や親族がなるのですが、ひとり暮らし世帯が増え、当事者が高齢化するなかで、その役割を代行するのが身元保証サービス※です。時代が生んだニーズに応えている、といえばその通りで、流通大手企業やクレジットカード会社が母体となっている団体から、NPO法人や宗教団体など、さまざまな分野からの参入があります。
比較的新しいサービスなので、まだ法的整備、監督機関やガイドラインもなく、どんなことをどのようにしてくれるのかはすべて契約書ベースです。
「老後が不安で仕方がない」という人の弱みにつけ込んだり、認知症が始まっている人を言いくるめたりして契約をとるようなコンプライアンス意識の低い団体も多く、利用者とのトラブルも多い実態もあります。
たとえば、身元保証サービスに関して次のケースのようなトラブルの相談がありました。
85歳の独り身のMさんが、入居しようとした施設から、ある身元保証事業者を勧められました。
ところが、その事業者はとてもいい加減なところでした。 パンフレットには「2、3ヵ月に一度の定期訪問」と書かれているにも拘わらず、契約書にはそのような記載がありません。「実際には一度も来てくれない」という別のご利用者の苦情をネットで見つけました。
また、肝心の保証額については、パンフレットでは「上限60万円」と記されています。ところが契約書では「無制限」とありました。明らかに契約内容が矛盾していたのです。
幸い、Mさんには姪がいたので、姪御さん経由で私のところに相談に来られ、直前で止めることができました。
Lさんのように相談者がいない場合、トラブルを避けるためには、まず運営はどのような団体かを知ることが必須です。トラブルのなかには、法外な供託金を求められ、そのまま使い込まれてしまった事例もあるので、やはり経営基盤がしっかりしているかどうかの確認は必須です。
そして自分が身元保証人にどのようなことを求めるかをはっきりさせた上で、契約書に書かれている内容を逐一確認することです。なかには、契約書をよく読まないまま「自分の死後は身元保証業者に財産を遺贈する」という内容にサインしてしまった人もいます。
<注釈>
※「身元保証サービス」とは……家族に代わって病院への入院や、福祉施設、賃貸住宅への入居時の身元保証人として引き受けるサービス。有料老人ホームや高齢者向けの住宅などへの入居には「身元保証人」が必要になるが、独身で親類縁者もいない、家族はいるが頼めないといった高齢者は「身元保証サービス」を利用することができる。