(※画像はイメージです/PIXTA)

高齢化が進む現代、高齢者に関連した事件や事故が増えています。特に認知症を抱えた高齢者に関する事故や犯罪被害は深刻な問題です。信頼できる人であっても、身内であっても、財産などを安易に任せてしまうことの危険性が浮き彫りになっています。高齢者に関連する事故や事件を予防するためにはどのような対策が必要か、今一度考える必要があります。本記事では、弁護士で介護ヘルパーの資格を持ち、主に介護・福祉の業界におけるトラブル解決の専門家として知られる外岡潤氏の著書『弁護士 外岡潤が教える親の介護で困った時の介護トラブル解決法』(本の泉社)から、具体的な事例が書かれた箇所を一部抜粋転載して紹介します。

全財産を預けた甥が持ち逃げ! 一体どうすれば?

人や物の名前が出てこなかったり、しまったはずのものがその場所になかったりということが増えたVさんは、認知症になったときを考えて、昔から可愛がっていた甥(姉の息子)に依頼し、全財産を預け管理してもらうことにしました。甥は笑顔で引き受けてくれました。

 

毎月の生活費として20万円を振り込んでもらい、足りない時は追加し、年に何度か収支を合わせるという形にして最初はうまくいっていました。ところが1、2年経ったある日、甥が突然音信不通になってしまいました。

 

Vさんの姉夫婦はすでに他界しており、他の親族も誰も行方を知りません。よくよく聞いてみると、甥にお金を貸している人もいるようです。Vさんの全財産は、甥とともに消えてしまいました。

 

まるでドラマやワイドショーに出てくるような話ですが、こうした事件はじつは数多く起きています。もし起きてしまったら、甥を探し続ける他ありませんが、それは雲をつかむような話です。弁護士の職権で住民票を調べることができますが、住民票はあくまで登録地に過ぎずそこに住んでいる保証はありません。

 

警察に「全財産を盗まれた」などと訴えても、よほどしっかりした証拠や甥の居場所のあてがない限り積極的に動いてくれないでしょう。

 

Vさんのように家族のいない人が、財産などの管理を誰かに任せたいと思ったとき、一体どうすればいいのでしょうか。

 

おひとり様を対象にした「身元保証会社」なら安心かというと、必ずしもそうとは言い切れません。

 

では、親族なら安心かというと必ずしもそうとはいえません。

 

こうしたトラブルを防ぐには、たとえ身内であろうと一人の人を信頼しきってすべてを預けないことです。最低限、任意後見契約という制度を使うなど、 第三者が関与する形にすべきです。

 

これは、将来自分の後見人となる人と公証役場で正式に契約をとりかわし、いざ自分が認知症になったときにその後見人が家庭裁判所(家裁)に申し立て、家裁の監督のもと財産を管理するという仕組みです。

 

しかし、もっと言うとこの任意後見も完璧ではないのです。甥が後見人になるとして、当の甥自身が「おばさんが認知症になった」と家裁に届け出なければ、いつまでも後見人制度が始まらないという落とし穴があります。

 

ですから、このようなときは弁護士や司法書士など資格をもつ法律の専門家に頼ることをおすすめします。最低限、財産を持ち逃げするということは起きないでしょう。

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弁護士 外岡潤が教える親の介護で困った時の介護トラブル解決法

弁護士 外岡潤が教える親の介護で困った時の介護トラブル解決法

外岡 潤

本の泉社

親の介護が始まった。突然のことなのでどこへ行けばいいの?介護保険の手続きは?親が施設への入居を拒んだら?親が施設で虐待を受けている!?訴えたら勝てる? など、介護を受けている本人とその介護をする家族のための介護…

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