「民間運営だから高いサービスを受けられる」という保証はない
特別養護老人ホーム(特養)は、国などの公的機関が運営する施設なので、予算という面では優位性があります。特養のような安い施設へ入れるのは、親に申し訳ないと思うことはまったくありません。
「サービスの質はスタッフの質」という意味では、社会福祉法人で働く人たちは準公務員なので安定しているし、教育も一定しています。ただし、その安定が「毎年同じことを繰り返すマンネリ化」を生んでいる面は否めないでしょう。それがスタッフのやる気を下げているかどうかはケースバイケースです。
本書の第1章「かしこい地域包括センターの利用法」の項目でも書きましたが、誰がどのようにやってもそれが給与に反映されないシステムが未だに主流なので、やる気度の高い低いはその人次第ということになります。
介護職のキャリアアップ支援と給与改善策
厚生労働省は、2017年10月に「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスの実現に向けて」というガイドラインを発表しました。
これにより、介護職の処遇改善のため、また利用者の多様なニーズに対応できるように、現場でのリーダー職を養成するなど、介護職の人たちがその意欲・能力に応じてキャリアアップを図ることを目指しています。
介護職員のキャリアパスとして一般的な例を紹介しますと、まず「初任者研修※」を一定期間受け、介護施設で働く資格を得ます。
次に「介護福祉士実務研修」を受け、「介護福祉士」の受験資格を取得します。国家資格である介護福祉士になるには、定められた学びや経験を習得し、さらに試験に合格しなければなりません。
このコースでキャリアアップすれば、それによって資格手当てがつき、給料もアップするということです。
さらに2019年10月には、「介護職員特定処遇改善加算」の取り組みが始まり、介護職員の賃金を、全産業の平均年収440万円に引き上げることを目指しています。
以上のようなことから、介護施設に関してだから「安かろう、悪かろう」ということは決してありませんし、逆に「民間だから高いサービスを受けられるだろう」という保証もないのです。
<注釈>
※「初任者研修」とは……在宅や施設を問わず介護職として働く上で、基本となる知識と技術を習得する研修。