介護施設のサービスの質=「スタッフの質」
よく聞かれる質問のひとつが、施設の入居金や利用料などの費用と、サービスの質の相関性です。介護施設のサービスの質とは、建物の機能設備や料理の味などもあるかもしれませんが、ほとんどは「スタッフの質」ということになるでしょう。
したがって給与が高ければ、スタッフの意識も高いということはあるかもしれません。けれども安いからと言って、スタッフの質が悪いかということも一概には言えないのが、介護の面白いところです。
また、入居金数千万円など、いくら高いお金を払っていても、それがきちんと人件費に反映されているとも限りません。たとえば、都心の一等地にある施設は、当然地代や賃料の比率が高くなるはずです。
ですから、「安かろう悪かろう」ということはいい得るとしても、「高かろう良かろう」という保証はどこにもない、というのが答えになります。平たく言えば「当たりはずれ」が大きいのです。
その理由としては、そもそも介護というものの「質」は数値化が困難であり、よそと比較検証しづらいという特徴が挙げられるでしょう。
たとえば普段のケアを提供するなかで、利用者との世間話やコミュニケーションが多い職員と、無駄口をきかずてきぱきとおむつ交換などをこなす職員と、どちらが「質が高い」といえるでしょうか。
答えは十人十色です。人によりその評価はさまざまに分かれ、何が優れているかを判定する物差も確たるものが存在しないことが分かりますね。
注目すべきは「経営者」(代表者)
では一体、何を見たらその施設の良し悪しがわかるかというと、私は経営者 (代表者)の経歴と経営方針に注目することをおすすめします。
パンフレットや広告ではどの施設も良いことしか書かないので見分けがつかないという人もいるでしょう。
見学に行ってみれば、営業担当者が出てきて、立板に水のトークでいいことばかり言う。 相手のペースに飲まれてしまって、聞きたいこともろくに言えなかった、などという体験談をよく見聞きします。
そのようなときは落ち着いて、まずその経営者や団体が「なぜ、どのようないきさつで介護という分野に参入したのか」という点を調べてみてください。
偏見かもしれませんが、たとえば「ずっと金融業界にいたが、本社が介護事業にも乗り出したので社長の座についた」といった経歴を見たときは敬遠した方がよいかもしれません。
一方で、「日本の介護現場が3K※と揶揄されることが堪らず、理想の現場を創るために創業した」といった熱い志が語られている施設であれば、安心できますね。
ただ単に「超高齢化社会に寄与するために」とか「お年寄りの笑顔のために」といった漠然としたことしか書いてなければ、「こだわりのない施設なのだろうか」と不安になります。 経営が上手くいかなくなれば、すぐに事業譲渡して手放してしまうかもしれません。
見学のとき、「なぜここで介護の仕事をしているのか」「この法人、施設の介護に対する思いや理念はどのようなものか」と施設長やスタッフに質問してみるのも良いでしょう。
<注釈>
※「介護現場の3K」とは……きつい、汚い、危険。