(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査とは、納税者の申告内容が正しいかどうかを調べる調査です。一般的に税務調査では、事業の取引内容やお金の流れを示す帳簿などの書類をチェックし、申告された内容と相違がないかを調べます。しかしながら、税務調査でスマホやLINEまでチェックされるという噂を耳にしたことはありませんか? 本稿では松本崇宏税理士(税理士法人松本 代表税理士)が、税務調査でスマホやLINEが調査の対象になるのかどうかについて説明します。

税務調査で調べられるモノとは

税務調査では、調査官が事務所や店舗などに訪れて実地調査を行います。実地調査では、基本的に帳簿を中心とした調査が行われますが、場合によってはスマホやLINEのデータを見せるように要求されることがあります。

 

■税務調査の基本は「帳簿調査」

税務調査では、申告内容に問題がないか、帳簿や領収書、請求書、納品書などの書類を細かくチェックします。しかしながら帳簿や書類をチェックしても申告内容の真偽がつかめず、さらなる調査が必要になると判断された場合は、書類や帳簿の保管場所だけでなく、金庫や机の中なども調べられます。もちろんその場合でも、勝手に金庫や机の中を開けることはなく、納税者の了承を得てから調査が行われます。

 

■パソコンやスマホのデータが調査対象になることも

昨今では、郵送で請求書を発行せずに、パソコンを使用して電子的に請求書を発送しているケースもあります。また、受注に関しても電話や書類ではなく、パソコンを通じて発注されるケースもあるでしょう。

 

そのため帳簿や紙の書類だけでは十分な調査ができなかった場合、必要に応じてパソコンのデータが調査される可能性があることは理解できるでしょう。同じように、現在は取引先とのやり取りにスマホを使うケースも増えているのです。書類として納品書や請求書などが残っていないものの不審な金額が帳簿に記載されていた場合などは、スマホのデータも調査の対象となります。

税務調査でスマホやLINEがチェックされるケースとは?

税務調査時にスマホやLINEのデータチェックが行われるのは、次のような場合です。

 

■取引先とスマホLINEでやり取りをしている

オフィスにいる人の場合、パソコンを使って取引先とやり取りをするケースが多いでしょう。しかし、外出の多い営業職などでは、外出時にも利用できるスマホを使って取引先とやり取りをするケースの方が多いのではないでしょうか。スマホから見積もりを送付したり、スマホで受注を受けたりするケースもあるでしょう。そのような場合は税務調査時にスマホのデータを提出するように求められる可能性があります。また、LINEを使った業務上のやり取りも増えているため、LINEのやり取りについても提示を求められるケースがあります。

 

■請求書などに日付が記載されていない

出力されたデータがある場合でも、書類に日付が記載されていない場合は日付の確認のために、スマホのデータを見せるように依頼される可能性があります。スマホやLINEのデータには日付が残っているため、いつのやり取りであるのかが明確に示されるからです。そのため、調査官も信ぴょう性の高い証拠としてスマホやLINEのデータの提示を求めるケースがあります。

 

■個人事業主でパソコンを所有せず、スマホのみで取引をしている

最近では、納税や確定申告もスマホでできるようになり、スマホがパソコンと同じような機能を持つようになりました。そのため、個人事業主の中にはパソコンを所有せずに、スマホだけを使って取引をしている人も増えています。パソコンがなければ、スマホに取引データが残っている可能性が高くなるため、スマホだけで取引をしている個人事業主の場合、スマホデータの提示が求められる可能性が高いでしょう。

とはいえ、スマホやLINEのデータを見せるのは抵抗感が…

税務調査でスマホやLINEのデータを見せるように言われたら、抵抗を感じる方もいるでしょう。では、スマホやLINEのデータの提示要求を拒否することはできるのでしょうか?

 

■スマホやLINEのデータを見せなくてもよい?

税務調査には強制調査と任意調査の2つがあります。脱税が疑われるケースに裁判所の令状を得て強制的に行われる税務調査が強制調査で、いわゆる「マルサ」と呼ばれる国税局査察部が担当する調査です。強制調査の場合は、納税者の意思によらず、強制的に調査が行われるためスマホも押収されるでしょう。

 

任意調査の場合も、任意という名称が用いられているものの、調査官には「質問検査権」という権限が与えられており、納税者には「受忍義務」があります。質問検査権とは、法に基づき、税金に関する質問や調査をする権限のことです。そして、受忍義務とは調査官が調査に必要な範囲として行った質問や書類等の提出の求めに応じる義務のことです。

 

つまり、任意調査であっても税務調査時に調査官からスマホやLINEデータの提示を求められれば、原則としてその求めに応じなければならないのです。

 

■提示するのは、あくまで「業務に関連するデータ」のみでOK

納税者は受忍義務があるものの、スマホやLINEの中にあるプライベートな内容まで調査官に提示する義務はなく、調査官にスマホを手渡して操作させる必要もありません。スマホやLINEの提示を求められたときは、求められた内容に該当するデータのみを見せればよいのです。プライベートな部分まで見られることはありませんが、税務調査という状況でスマホやLINEの提示を求められると不安な気持ちになってしまうケースも多いでしょう。

 

業務用のスマホであれば、プライベートなやり取りは行わず、業務とプライベートの両方で使用しているスマホであれば、データを業務用とプライベート用に分けておくとよいでしょう。

まとめ

税務調査では、帳簿や書類の調査が主体となりますが、情報が不十分であった場合には納税者のスマホやLINEの取引内容まで見られる可能性があります。納税者には受忍義務があるため、原則として業務に関連する内容のスマホやLINEのデータの提示を拒否することはできません。調査官がプライベートな内容のデータを調べることはありませんが、スマホを見せることに抵抗がある場合は、業務用とプライベート用のデータをまとめておくことをおすすめします。

 

税務調査ではLINEのやり取りが証拠として提出された事例もあります。税務調査を前にスマホやLINEの内容に不安を感じているようであれば、税務調査の対応実績が豊富な税理士法人にご相談下さい。

 

 

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

 

税理士法人松本

税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。

 

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