(※写真はイメージです/PIXTA)

※本記事は、東洋証券株式会社の中国株コラムから転載したものです。

中国ではマックより人気の「KFC」

「私の血にはアメリカのコーラが混ざっているからね!」――。1970年代生まれの知人が冗談交じりで豪語する。

 

中国で人気の米系ファストフード。ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)は1987年、マクドナルド(マック)は90年に中国に進出した。

 

当時、ちょっと背伸びをして友人たちとフライドチキンやハンバーガーを食べたことが彼の青春時代のハイライト。大人になってもその思い出と味が忘れられず、いまでも週に一度はファストフード通いを欠かさないという。

 

全体の96%…ファストフード事業を独占する「ヤム・チャイナ」

中国でKFCやピザハットを展開するヤム・チャイナ(09987)。米ヤム・ブランズの中国事業を分社化し、2020年に香港市場に上場した。両ファストフード事業で売上全体の約96%(22年)を占めている。

 

[図表]主なチェーン店の既存店売上高(中国店舗、前年同期比増減)
[図表]主なチェーン店の既存店売上高(中国店舗、前年同期比増減)

 

ファストフードと侮るなかれ。中国ではKFCは高い知名度とブランド力を誇る外食産業の主要プレーヤーだ。朝食にお粥、夜食に羊の串焼きを提供するなど、中華風メニューも多く展開。独自の配送スタッフを抱え、デリバリーにも強みを持つ。注文から配送までの時間が他と比べても格段に速く、筆者もよくお世話になっている。

 

中国で肉といえば豚肉だが、それと同じくらいの人気を誇るのが鶏肉。よって、マック派よりKFC派が多いようだ。

 

デリバリー活用でコロナ禍でも業績安定

新型コロナ禍のなかでも業績は比較的安定していた。KFCの既存店売上高(四半期ベース、前年同期比)は最悪期でも10%台の減少。スターバックス(スタバ)や味千(中国)控股(00538)が最大で50%超減少したのとは対照的だ。

 

また、海底撈国際控股(ハイディーラオ、06862)など他の外食企業と異なり、コロナ禍のなかでも赤字経営に陥らなかった。デリバリーをうまく活用し、市民のニーズに応えてきたのだろう。

 

ヤム・チャイナのもう1つの看板ブランドであるピザハットは、日本と異なりレストラン経営に注力。デリバリー比率は売上高の約43%(22年)にとどまる。ファミレス感が漂うピザレストランは家族連れなどでいつも賑わっている。

 

ここで中国の店舗数を単純比較。22年時点で、KFCは9,094店、スタバは6,090店、マックは4,978店、ピザハットは2,903店ある。マックは今年、900店以上の新規オープンを目指しているが、ヤム・チャイナは「KFC+ピザハット」で最大1,300店舗の新規出店を計画中だ。中国人の胃袋をめぐるファストフードの戦いは続く。

 

そういう筆者もチキンの虜だ。もう20年ほど前の北京。大学に通っていた筆者は、金曜日の授業が終わると留学生仲間と一緒にキャンパス近くのKFCに行ったものだ。週に一度の贅沢。値段が普段の食事の5倍ほどしたフライドチキンは高嶺の花だった。大げさかもしれないが、そんな時代である。まぁ、さすがにコーラをがぶ飲みすることはなかったが……。

 

 

奥山 要一郎

東洋証券株式会社

上海駐在員事務所 所長

 

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