ガソリン価格は「補助金」で抑制されているが…
ガソリン価格は、2022年1月からの「燃料油価格激変緩和補助金」によって抑制されてきています。
これは、レギュラーガソリンの1リットルあたりの本来の価格が高騰した場合に、石油元売事業者・輸入事業者に対し、価格上昇を抑える原資として補助金を支給する制度です。
これまで、この制度のおかげで、ガソリン価格は1リットルあたり170円前後に抑えられてきました。資源エネルギー庁の資料によれば、抑制幅の最大は2022年6月20日の1リットルあたり41.9円(215.8円→174.9円)です。
しかし、この補助金で抑えられた額以上に、ガソリン価格を大きくしている要因があります。それが各種の「税金」、特に「ガソリン税」です。
ガソリンにかかる税金
ガソリン価格には、1リットルあたり、以下の税金が含まれています。
【1リットルあたりのガソリン価格に含まれる税金】
・ガソリン税:53.8円(揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円)
・石油石炭税:2.04円
・温暖化対策税:0.76円
このうち最も大きいのが揮発油税と地方揮発油税を合わせたガソリン税です。
また、これらの税金を含むガソリン価格全体に対し、消費税が10%かかります。
2023年7月3日時点でのガソリン価格は1リットル172.5円なので、そのうち31.2%をガソリン税が占めている計算になります。
なお、「消費税込み」の価格に占めるすべての税金の占める割合を計算すると、38.9%と、4割近くにも達します。
ガソリン税の税収は2兆円超で推移しており、財務省の資料によれば、2023年度予算では2兆2,129億円(揮発油税1兆9,990億円、地方揮発油税2,139億円)の見込みです(「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税(国税)の概要」参照)。国にとって貴重な税収源となっていることがうかがわれます。
ガソリン税が「1リットル53.8円」になっている理由
では、ガソリン税はなぜ「1リットル53.8円」という金額になっているのでしょうか。これには、複雑な歴史的経緯があります。
ガソリン税の本来の税率(本則税率)は1リットル28.7円です。これに対し、現在適用されているガソリン税の税率(1リットル53.8円)は「特例税率」です。
この特例税率は2010年以前の「暫定税率」に由来するものです。
1974年に、道路整備の財源が不足しているということを理由に「1リットル53.8円」の「暫定税率」が適用されました。それ以来、現在に至るまで実質的に引き継がれてきているものです。
ガソリン税はもともと「自動車重量税」とともに、その使い道が道路の整備・維持管理に限られる「道路特定財源」でした。それが2009年に、使い道が限られない「一般財源」へと移行されました。そして、ガソリン税の「暫定税率」は2010年以降、法改正により「特例税率」へと実質的に引き継がれ、「1リットル53.8円」のまま現在に至っているのです。