いつ、どれくらい複業するかは「複業先を決める前」に考える
複業が簡単にできるようになったからこそ、複業に挑戦するすべての人に必須のスキルがあります。それは、「自己管理能力」です。もはやスキルとして考えていただいて良いでしょう。自己管理とは、「①タスク管理」「②生産性向上」「③心身の健康管理」という3つに分類されます。
3つの自己管理を踏まえた上で、複業をはじめるときに大事なことは「複業時間割を設計する」ことです。いつ、どれくらいの時間、どのようなスケジュールで複業を行うのか、複業先を決める前に言語化しておくことが重要です。
スケジュールは複業先を決めてから、と先走りしがちですが、必ず複業を決める前に考えましょう。複業時間割を作成し、予め稼働可能時間や曜日などを想定しておくことで、複業希望先との面談時に担当者と業務の摺り合わせを円滑に行うことができます。これは自己管理をする上で鉄則です。何も決めずに面談に挑んでしまうと無計画な複業になってしまうのです。
また、複業は金銭報酬やスキル報酬、感情報酬など本業では得られない報酬を得ることができる一方、心身が疲弊するリスクもあります。
実際に複業をはじめると熱意が先行し、あれもこれもと挑戦したくなりますが、本業の稼働時間や自身の理想と現実のライフスタイルと相談し、バランスを考慮したうえで取り組むことが大切です。
何をするにも慣れるまでが一番大変です。無理のない複業時間割を設計しましょう。複業時間割とは、学生時代に誰しも見たことがある1週間のスケジュールのことです。
複業時間割を作るというのは、1週間のカレンダーの中で、どの時間帯を複業に費やすのか、を可視化する作業です。例えば、本業が終わった後の〈平日18時以降〉、週に〈2〜3日〉程度、稼働する曜日は〈火曜日、水曜日〉で、1日当たり〈最大2時間〉、という形で作成します。この時間割を最初に決めることによって、本業と自身のライフスタイルに合わせた無理のない複業をはじめることができます。
人によって時間割の作り方はさまざまですが、6つの時間割パターンを紹介します。あくまで参考の型として、自分に合った時間割を見つけてみてください。
①コの字型 ~「平日の朝・夜」と「休日」に複業
図表1のようにカタカナの「コ」の文字のような時間割です。平日の朝(始業前)と夜(終業後)、休日の中で複業時間を設計するパターンです。本業で定時が決まっている場合には業務時間前後の時間を計画的に活用できるため、オススメです。
繫忙期や業務外のプライベートの時間も加味した上で複業の時間帯を想定して設計してみましょう。土日も最初は無理のない範囲で余裕を持った時間設計がオススメです。休日の片方は完全にオフにする、など自分の体調と向き合ってみてください。
②イコール型 ~初心者にオススメ!「平日の朝・夜」に複業
図表2のように記号の「=(イコール)」のような時間割です。平日の朝(始業前)と夜(終業後)で複業時間を設計するパターンになります。コの字型との違いは朝と夜のみを複業時間に充てている点です。休日はしっかり休むというメリハリをつけてプライベートの時間を確保できる点で初心者にはオススメの時間割です。
複業に慣れてきて、もっと時間を増やしたい、もっと複業先を増やしたい、というときには、①のコの字型の時間割に変更することもできます。
③モーニング特化型 ~「本業の業務時間前」に複業
文字通り、複業の時間帯をすべて朝に設定しているパターンになります。ライフスタイルが朝型の人には非常にオススメです。特に早朝は本業のMTGが入ることも少なく、クライアントからのメールや同僚からのメッセージ通知が来ることは多くないでしょう。1日の中で最も生産性高く活動することができるのが朝だという人にはもってこいの時間割です。本業での残業や業務終了後のプライベートの時間の確保もしやすいため、平日のメリハリをつけた生活が理想の場合はこちらがオススメです。
④夜行性型 ~「本業の業務時間終了後」に複業
こちらは③のモーニング特化型とは逆で、本業の業務時間の終了後に複業時間を設定しているパターンです。
いわゆる「夜型」の人はこの時間割になる傾向があります。朝はゆっくりしたい、本業の始業が早い、読書などインプットの時間に充てたい、子どもの保育園送迎がある、など朝に用事ややりたいことを予定する場合は、夜行性型をオススメします。
基本的には本業の業務時間終了後に複業を行うことになり、これをあらかじめ時間割として設定することで、日中は常に生産性を意識した生活を送ることもできるでしょう。不必要な残業や夜遅い時間の打ち合わせも意識的に避けることができます。
ただ、夜行性型だからといって深夜まで際限なく複業をし続けることを意味するわけではありません。何時に就寝するといったマイルールもあわせて決めることで自己管理を意識した時間割に仕上がります。
⑤フレックス型 ~「就業時間を自由に設定できる人」ならでは
本業がフレックス制をとっている場合、本業の柔軟性のあるスケジュールに合わせた自由な複業時間の設定ができるでしょう。複業先に訪問して仕事をするパターンや決まった時間に複業先との定例MTGがあるパターンではフレックス型がマッチすると思います。
前提として、複業の業務は、本業の就業時間外に行うものです。たとえチャットを返すだけだとしても、本業の勤務先から給与をもらい、働いている時間内に、自分自身の複業時間を使うことはできません。このフレックス型は、本業がフレックス制を採用しているなど就業時間を自由に設定できる人のみに当てはまる働き方です。
また、複業時間を自由に設定できてしまうからこそ、オーバーワークや想定外のことが発生してしまう可能性があるため、初心者には向かない時間割になります。本業がフレックスだとしても慣れるまではチャレンジしないことも1つの英断だと思います。
⑥休日特化型 ~複業するのは「土日のみ」
最後は、休日特化型という土日のみを複業の時間に充てるパターンです。平日は本業やプライベートの時間として、土日のみで複業をするという時間割になります。
土日は複業先も営業時間外であるケースがほとんどです。もし複業中に何か聞きたいことがあっても気軽に連絡をすることができず、レスも休み明けになることがほとんどでしょう。そのためこの時間割を適用できるか否かは職種や複業先でのミッションやプロジェクトに左右されます。
しかし、デザイナー、クリエイターなど成果物が明確にあり、チームではなく個人でアウトプットを出していく職種の場合は土日にしっかり時間を使うことができるため、人によっては休日特化型が最適というケースもあります。すべてに当てはまりますが、自身の職種や仕事の進め方にマッチした時間割を選ぶことが重要です。
大林 尚朝
複業エバンジェリスト
株式会社Another works 代表取締役
1992年生まれ、大分県出身。早稲田大学法学部卒業。
2015年、パソナグループ入社。顧問やフリーランスなど業務委託人材紹介の新規事業に従事。年間最優秀賞など多数受賞。2018年、株式会社ビズリーチ(現.ビジョナル株式会社)入社。M&Aプラットフォームの事業立ち上げを行う。
2019年、株式会社Another works創業。複業したい個人と企業や自治体を繋ぐ、成功報酬無料の総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を開発・運営。創業4年で累計1,000社以上が導入、50,000名以上が登録、70自治体以上と複業での地域活性に係る連携協定を締結、テレビや新聞など400件以上の掲載実績を誇る。
複業、経営・組織戦略、キャリア構築、地域活性をテーマに発信し、行政や教育機関をはじめ100件以上に登壇、「日本経済新聞」など多数のメディアでも取り上げられている。