2.所在不明の共有者がいる場合に「不動産を売却する」には
共有不動産を第三者に売却する場合も、共有者全員の同意が必要であるため、共有者の一人が所在不明の場合は、第三者に売却することができません。
このような場合には、裁判手続きを通じて、所在不明の共有者の持分を譲渡する権限の付与を受けることが考えられます。つまり、共有者は、裁判所の決定を得ることにより、所在不明の他の共有者の持分を第三者に譲渡することが可能になります。
裁判手続きを行うためには、上記1の手続きと同様に、連絡の取れない共有者の所在調査を尽くしたうえで、共有物の所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行う必要があります。
また、共有者は、裁判所の定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託する必要があります。この供託金の額は、不動産の時価を所在不明の共有者の持分に応じて按分して得た額とされています。
なお、以上の裁判手続きは、共有不動産全体を特定の第三者に譲渡する場合に限り認められますので、共有者の中に持分譲渡を拒む者がいる場合には、上記裁判は認められません。
設例では、Aさんとしては、Bさんも特定の第三者に共有不動産を売却することに同意しているのであれば、裁判所の決定を得て、Cさんの持分と一緒に第三者に売却することが考えられます。
これに対し、Bさんが持分譲渡に反対している場合には、第三者に対する売却を実現することはできません。
なお、共有物の処分ができずに行き詰った場合には、Aさんとしては、共有物分割訴訟を提起し、AさんがBさんとCさんの持分を取得する代わりに、その価格をBさんとCさんに賠償することを主張することが考えられます。最終的には裁判所の判断になりますが、Aさんが価格賠償により全ての持分を取得することができれば、Aさんが不動産の単独所有者となり、処分等を自由に決めることができます。
まずは弁護士に相談を
以上、共有物に関するルールと所在不明の共有者がいる場合の裁判手続きについて概説しました。共有不動産の具体的な活用を検討する際には、民法上のルールに従って共有者間で適切に意思決定を行うことが重要であり、意思決定の手続き・過程に不備があると、のちに損害賠償等のトラブルに発展しかねません。
設例のAさんのような状況にある方は、弁護士等の専門家に一度ご相談されることをお勧めします。