妻の不倫相手へ慰謝料請求も多重債務者。回収は無理?
相談者のアメロウさん(男性・仮名)は、妻が不倫し、現在別居中です。
妻の不倫相手には、不貞の慰謝料を請求しています。
ただ不倫相手は借金があり、もはや一円も費やすお金がなく、自己破産を考えているようです。
自己破産だけで終わらせようと、不貞も認めていません。下手に認めてしまうと、支払う弁護士費用が増えるからということです。
こんな姿勢なので、話し合いは完全に平行線で、このままいくと訴訟になるのも時間の問題です。
相談者としては、
・金銭の問題だけでも早く解決して、精神的負担から解放されたい
・妻も責任があり、半分を支払う意思なので、相手とは減額を交渉
の2点から妥協点を探りましたが、焼け石に水だったそうです。
「慰謝料自体の額が下がっても自己破産と不貞の弁護士費用がダブルでかかり、結局は支払い額が大きくなる。自己破産だけなら最少の額で済む。奥様には申し訳ないが、それしかない」と断固譲るつもりはないようです。
相談者としては、もはや額はあまり問題ではなく、「相手の誠意を見たい」が本音です。
そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。
(1)経済的に困窮した相手に慰謝料を請求することはできないのか。
(2)この男女トラブルが、相手の自己破産手続きに何らかの影響を与えることはあるのか。
法的に請求は可能だが、回収不能となるリスクあり
1.法的に請求は可能
相手方の資力の有無に関わらず、訴訟提起をし、その中で必要な主張立証ができれば、判決で相手方に対しての慰謝料請求が認められます。
判決後も相手方が任意で支払いをしない場合には、相手方の資産に対して強制執行を行い、債権の回収を行います。
2.回収可能性の問題
もっとも、相手方が無資力の場合には、仮に判決で請求が認められても、強制執行の対象となる資産がなく、結果的に回収不能となってしまいます。
3.破産手続きへの影響について
また、相手方が破産申立をした場合には、ご相談者様の相手方に対する慰謝料請求権は、破産債権として破産手続きに参加して配当を受けることになります。破産手続きの中で十分な配当がされなかった場合、相手方がご相談者様に対して積極的な害意(悪意)をもって不貞行為に及んだという例外的な事情のない限り、債権残額は免責債権となり、免責の対象となります(破産法253条1項2号参照)。
なお、免責とは、債権の強制力を失わせるものであり、債権回収が不可能になってしまいます。
本件では、破産手続きの中で配当もほとんど期待できないと思われますので、相手方が破産申立をした場合には結果的に慰謝料の回収は不能になるでしょう。
4.結論
以上の通り、訴訟をすれば法的に慰謝料請求が認められる可能性がありますが、相手方が破産申立をすれば、回収不能になってしまいます。
また、相手方が破産申立をしない場合でも、相手方に資力がなければ、強制執行をすることができず、事実上回収不能となるリスクがあります。
不貞相手に求める「誠意」とは何か
相談者様の本音が「相手の誠意が見たい」とのことですが、相手方に求める「誠意」とは何でしょうか。
相手方は、相談者様の妻と不貞行為に及んだ挙げ句、妻が慰謝料の慰謝料半額負担を認めているのに、自身は責任を認めず、かつ、少しでも支払額を下げたいという立場を示しています。
相手方に「誠意」がないことは、すでにはっきりしています。「額が問題ではない」のであれば、回収不能になるリスクがあっても、速やかに訴訟提起をし、相手方の法的な責任を明確にするべきでしょう。
他方で、弁護士費用の負担や回収不能のリスクを考慮し、経済的合理性を優先して、訴訟提起までは行わず、請求を事実上諦めるということも考えられます。
いずれの選択肢をとるにしても、最終的には後悔のないようご自身の納得できる判断をなさることが大事です。