価格変動リスクに要注意!…デリバティブ(金融派生商品)の「先物」「オプション取引」の基本【FPが解説】

価格変動リスクに要注意!…デリバティブ(金融派生商品)の「先物」「オプション取引」の基本【FPが解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

デリバティブとは「金融派生商品」とも呼ばれ、価格変動リスクを回避する手段として派生的に生まれてきた金融取引です。個人投資家が直接売買することはありませんが、仕組債に組み込まれており、知らないうちに間接的に売買してしていることもあります。今回は、デリバティブのなかの、先物取引、オプション取引について学習しましょう。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

将来の売買について現時点で約束する「先物取引」

「先物取引」とは、将来あらかじめ決められた期日に特定の商品を予め決められた価格で取引することを約束する契約のことをいいます。代表的なものとして、「国債先物取引」「株価指数先物取引」「金利先物取引」などがあります。これらの先物は、証券取引所などに上場されており、満期前であっても市場で売買することができます。満期前に売買しなかった場合は、満期に決済されることになります。

 

先物は、少額の証拠金を担保として、多額の取引を行うことができます。このことを、「てこの原理」になぞらえて、レバレッジ効果といいます。少ない資金で多額の損益は生じるため、ハイリスク・ハイリターンになります。

 

 

先物取引をする目的には「ヘッジ」「スペキュレーション」および「アービトラージ」があります。

 

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【先物・オプション取引】デリバティブ(金融派生商品)の価格変動リスク

◆ヘッジ

ヘッジ目的とはリスク回避を意味し、投資家が保有している現物の価格変動リスクを、先物取引によって回避することが目的となります。ヘッジ目的の手法には、「売りヘッジ」と「買いヘッジ」があります。

 

売りヘッジとは、現物の価格下落リスクに備えるものです。現物を将来売ろうとしているものの、値下がりが予想されるとき、先物を売っておけば、将来、本当に値下がりしたとしても、先物を買い戻すことで利益が得られるため、現物からの損失を補うことができます。

 

[図表1]売りヘッジのイメージ

 

逆に、買いヘッジとは、現物の価格上昇リスクに備えるものです。現物を将来買おうとしているものの、値上がりが予想されるとき、先物を買っておけば、本当に値上がりしていても、先物を売却することで利益が得られるため、現物を高値で買うことになる失敗を補うことができます。

 

[図表2]買いヘッジのイメージ

 

◆スペキュレーション

スペキュレーションとは、投機のことです。つまり、価格変動を予測して先物を売買することにより、利益を得ることを目標とするものです。

 

たとえば、将来の値上がりが予想されるとき、先物を買っておけば、本当に値上がりすれば、先物を売却することで利益を得ることができます。

 

[図表3]スペキュレーションのイメージ

 

◆アービトラージ

アービトラージとは、裁定取引、すなわち、現物と先物との間にある価格差を利用して利益を得ようとする取引です。さや取りともよばれます。つまり、割安なものを買って、割高なものを売っておけば、価格差が解消した時点で反対売買することによって利益を得ることができます。

 

[図表4]アービトラージのイメージ

 

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権利を売買する「オプション取引」

「オプション取引」とは、取引する商品を、将来あらかじめ決められた期日またはそれまでの期間内に、あらかじめ決められた価格で買う権利、または売る権利を売買する取引をいいます。この権利のことを「オプション」と呼ぶのです。

 

つまり、オプションの売り手がオプションを提供し、オプションの買い手が、それに対する対価を支払う取引です。この対価のことをオプション料またはプレミアムと呼びます。

 

ただし、オプションは、買うか売るかの権利に過ぎませんから、オプションを買っていても、その権利を行使せずに放棄することも可能です。反対に、オプションを売っていれば、買い手が権利行使したときに、必ずそれに応じる義務があります。

 

オプションでは、買う権利のことをコール・オプション、売る権利のことをプット・オプションといいます。

 

ここでオプションを買うことを考えてみましょう。買うということは、将来売買する権利を持つこととなります。権利ですから、行使してもいいですし、行使しなくても構いません。

 

たとえば、A株式を3ヵ月後に5,000円で買うコール・オプションをプレミアム300円で購入したとしましょう。3ヵ月後にA株式の価格が6,000円となった場合、700円の利益を得ることができます。なぜなら、オプションの権利行使し、プレミアム300円を含めた5,300円でA株式を購入することができると同時に、6,000円で外部へ売却することができ、6,000円と5,300円の差額の700円が利益となるからです。

 

逆に、3ヵ月後にA株式の価格が4,000円となった場合、権利行使して5,000円で購入するよりも、外部から4,000円で購入するほうがお得ですから、権利行使しません。そうすると、300円の損失となります。なぜなら、支払ったプレミアム300円が取られてしまうからです。

 

ここで、コール・オプション取引とプット・オプション取引には、それぞれ、売る人と買う人がいることを理解しましょう。つまり、オプション取引には、コール・オプションの買い、コール・オプションの売り、プット・オプションの買い、プット・オプションの売りの4つの取引があるということです。

 

反対に、オプションを売ることを考えてみましょう。売るということは、将来売買する権利を相手に提供し、その義務を負うこととなります。義務ですから、必ず応じなければいけません。しかし、権利行使されなければ、取引に応じることが無くなり、もらったプレミアムを利益として得ることができます。

 

たとえば、A株式を3ヵ月後に5,000円で買うコール・オプションをプレミアム300円で売ったとしましょう。3ヵ月後にA株式の価格が6,000円となった場合、相手から権利行使されてしまいます。その場合、外部から6,000円で買ってきたA株式を5,000円で売らなければいけないため、700円の損失です。なぜなら、プレミアム300円を受け取っていたものの、A株式の売買で1,000円の損失が生じため、300円と1,000円の差額の700円が損失となるからです。

 

逆に、3ヵ月後にA株式の価格が4,000円となった場合、相手は権利行使してきません。外部から4,000円で購入するほうがお得だからです。そうすると、受け取ったプレミアム300円が利益となります。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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