(※写真はイメージです/PIXTA)

父が逝去し、トラブルのもととなったのは、生前の父が集めていた骨董品と、先々に母しか入る予定のないお墓の今後。母と娘2人の意見が大きく食い違ってしまい、調停申し立てをすることに……。本記事では、実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、墓じまいと骨董品の形見分けにおける円滑な対処法を解説します。

2.墓じまい

今回のように、娘二人が嫁いでおり嫁ぎ先の墓に入る予定であり、今後亡Aが納骨されている墓にはBが入る他には入る人もいない、ということですと、誰かが一旦承継してもその後の承継者がいないということになりますので、墓じまいも検討されるところです。

 

墓じまいと言っても、現在ある墓内の遺骨を改葬する必要がありますので、現在ある墓を閉じるというだけでは終わりません。一般的には、

 

①現在ある墓から遺骨を取り出す(その際に、魂抜きの供養・閉眼供養等をすることがあります。)

 

②墓石等を撤去処分し更地にして管理者に返還する

 

③①の遺骨について市区町村の改葬許可を得たうえで合葬墓等に納骨する

 

ことが必要になり、③の合葬墓等への納骨に伴って寺院等に永代供養を依頼すると、永代供養料等の支払いを求められることが多いといえます。そして、この永代供養料等の金額は、寺院によってその多寡に幅があります。また、①②の作業には石屋を手配する必要があり、その費用がかかります。

 

このため、墓じまいを検討される際には、まずは墓を管理する寺院等に対し、合葬墓の有無・合葬墓に入れる遺骨の範囲(檀家に限るとする寺院もありますが、宗派等一切を問わず受け入れ可能とする合葬墓もあります。また、墓内の遺骨のほか、現在の使用権者までは将来亡くなったときにも入れるとする合葬墓もあります。)・墓じまいそのものの費用とその後の永代供養料等の金額等を問い合わせ、具体的な内容を確認する必要があります。

 

また、改葬許可を得るためには納骨されている者の特定が必要であり、寺院等によっては遺骨の数によって永代供養料等の額が変動することもありますので、予め寺院・管理者に対し、過去帳等の記録の確認を求めることは必須であり、場合によっては墓を一度開けて中の骨壺数・そこに記載されている名前を確認することまでした方がよい場合があります。

 

この点、都立霊園等の公営霊園では、合葬施設があり永代供養料等の支払いを要しない又は低額に定められていることが多いですが、被相続人から祭祀承継者への名義変更手続とそれに対する許可が必要とされる・合葬施設への移設の申込時期が毎年毎に一定期間に限定されているといった手続面での条件があることが多いですので、予め手続きを確認することは必須です。

 

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次ページ【形見分け問題】骨董品は遺産のうちに入る?

※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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ぎょうせい

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