(※写真はイメージです/PIXTA)

ペアローンは共稼ぎの夫婦にとって融資枠が広がり、より高額な物件購入も可能になる便利な借入方法です。ただし夫婦間に亀裂が入り、離婚が現実になってくれば、一気に不都合が噴出します。そもそも互いの意向が噛み合わない状態が離婚の根っこにあるとすれば、全てがギクシャクしてしまうものです。本稿では実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する際の注意点について、岡部将吾弁護士に解説していただきました。

4.ローンを完済した後の所有権について

(1)売却をしないままローンを完済した場合

 

売却をしないまま住宅ローンを完済すると、自宅不動産の抵当権は抹消されますが、所有権はご相談者様と配偶者の共有のままで変化はありません。

 

夫婦共有名義の自宅不動産に、配偶者が単独で居住しているという状態になります。

 

(2)共有物分割請求について

 

住宅ローン完済後の共有状態を解消するためには、財産分与とは別に、配偶者に対して共有物分割請求を行うことが考えられます。共有物分割請求は、共有状態の解消のため、共有者に対して、共有持分の買い取りや共有物全体の売却を求めることができます。

 

本件では、ご相談者様の共有持分の買い取りや、自宅不動産の売却を求めていくことが考えられます。

 

なお、住宅ローンの抵当権が抹消されているので、共有持分の売却や名義変更に抵当権設定者の同意得る必要はありません。そのため、完済前の財産分与よりも、完済後の共有物分割請求の方が円滑に進む可能性があります。

 

本件では、財産分与の中での不動産売却やローンの引継ぎは難しいと思われますが、住宅ローン完済後に共有物分割請求をして共有持分の買い取りや不動産の売却をすることはできると考えられます。

 

5.ローンの返済ができなくなった場合

他方で、仮に途中でローンの返済が難しくなった場合には、不動産は抵当権実行により強制競売にかけられることになります。

 

強制競売の結果、ローンの全額返済ができれば良いですが、ローンが残ってしまった場合にはご相談者様と配偶者が残額の一括返済を求められることになります。

 

ペアローンは離婚時のお荷物になります

1.ペアローンのリスク

夫婦ペアローンは、夫婦がそれぞれ個別に住宅ローン契約をし、互いに連帯保証人になっているものです。

 

別居や離婚をしても、当然、自身の住宅ローンの残債がなくなるわけではなく、また、配偶者の住宅ローンの保証債務も継続します。

 

加えて、住宅ローンを一方の配偶者に引き継がせることも、実務上、抵当権設定者である金融機関が同意をしないため、かなり難しいです。離婚時の財産分与の中で売却をすることも考えられますが、そもそもオーバーローンの場合には財産分与の対象外となります。

 

また、財産分与の対象になったとしても、配偶者が不動産への居住継続を希望する場合には、売却ではなく、配偶者から単独取得の対価として代償金が支払われるにとどまり、住宅ローンの引継ぎまでは期待できません。

 

したがって、ペアローンは、別居や離婚をした後、当該不動産に居住しない場合であっても、自身の住宅ローンの残債及び配偶者の住宅ローンの保証債務が残る可能性があり、離婚時には「お荷物」になることが多いです。

 

2.夫婦ペアローンを組む際には慎重に

夫婦ペアローンで自宅を購入する際には、新居での夫婦生活に夢を膨らませ、将来別居や離婚をすることなど想像もしていないことが多いと思います。

 

しかし、婚姻した夫婦の3分の1が離婚をする時代です。

 

そのため、夫婦ペアローンを組むかどうかの判断をするにあたっては、将来の別居や離婚をした場合のリスクも念頭において、慎重に検討をすることが望ましいといえます。

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