フィリピン中央銀行「預金準備率」引き下げ…経済への影響は限定的か?

6月19日週「最新・フィリピン」ニュース

フィリピン中央銀行「預金準備率」引き下げ…経済への影響は限定的か?
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週はフィリピン中央銀行による預金準備率(RRR)の引き下げの影響について考察していきます。

比中央銀行「預金準備率(RRR)」引き下げ影響

フィリピン中央銀行(BSP)の預金準備率(RRR)の引き下げは、新型コロナウイルスパンデミックの中で銀行に与えられた救済策の期限切れとタイミングが重なるため、流動性への影響は最小限であると見られています。

 

フィリピン中央銀行のメダラ総裁は、モネタリーボードが6月30日から大手銀行や準銀行金融機関の預金準備率を250ベーシスント(bps)引き下げて9.5%にすると発表しました。

 

デジタルバンクの比率も200ベーシスポイント引き下げて6%に、貯蓄銀行の比率も100ベーシスポイント引き下げて2%に、農村および協同組合銀行の比率も100ベーシスポイント引き下げて1%に引き下げられます。

 

これらの引き下げは、マイクロ・小規模・中規模企業(MSME)への融資を準備要件の代替としてカウントするというパンデミックの救済策の期限切れと重なります。

 

フィリピンの銀行のRRRは、東南アジア諸国連合(ASEAN)で最も高いままですが、2018年には20%だったことから見ると、大幅に資金の流動性は高まっています。

 

MSMEへの融資をRRRとみなすという代替コンプライアンスの期限切れにより、約2,724億ペソ(約49億ドル)の流動性が吸収され、RRRの250ベーシスポイントの引き下げにより約3,601億ペソの流動性が供給されるという相殺現象が発生し、流動性供給の純効果は877億ペソになります。この金額は、BSPが現在吸収している余剰流動性のわずか6.3%に過ぎず、影響は限定的と見られています。

 

また、RRRの引き下げが発効するタイミングで、BSPが56日間の債券を発行するため、実際には、RRRの引き下げによって供給される流動性は、同じ日に発行される短期債券に吸収される可能性が高いと見られています。

 

したがって、RRRの引き下げによる為替市場への影響も小さいと見られています。フィリピンペソは、現在不安定な状態にありますが、これは、ドルの強さ、フィリピン経済のパフォーマンス、貿易レベル、金利の安定など、いくつかのファクターに依存しています。

 

ペソは過去数ヵ月間にドルに対して弱含みとなっており、米連邦準備制度理事会(FED)の将来の政策動向に関する混合シグナルや、米国の債務上限問題がが影響しています。

 

先月、BSPのモネタリーボードは政策金利の引き締めを一時停止し、第3四半期まで基準金利を据え置く意向を示しました。一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)は先月、25ベーシスポイントの利上げを行い、Fed基金利を5〜5.25%に引き上げました。

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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