「事業の失敗」「急なリストラ」「給与ダウン」がスタートアップ転職のリスク?
覚悟すべき「3つの前提条件」
「転職目的やスキルがあるから、スタートアップに飛び込んでみよう」
と思ってもらえるのは、スタートアップ業界に関わる者としてとても嬉しいことですが、スタートアップには覚悟すべき前提条件があるということも、きちんとお伝えしなければいけません。
本書で繰り返していますが、結構な頻度で起こり得ることは、
①事業の失敗(会社のリビングデッド化)
②急なリストラ(人員整理)
③給与ダウン
の3つです。これが、覚悟すべき3つの前提条件です。
これはあくまで「前提条件」(デフォルト)であって、リスクとすら言えません。スタートアップでは至極当たり前に起きることなのです。これを 「大きなリスクだ」と思うのであれば、スタートアップには行かないほうがいいでしょう。
もしくは「メルカリ」のような、「メガベンチャー」と呼ばれる安定した上場会社に行くほうがいいと思います(ただしメガベンチャーになると、「仕事の裁量はそれほどない」という条件付きにはなります)。
「家計のバーンレート」を下げておくのがコツ
この「覚悟すべき前提条件」、すなわち「①事業の失敗」「②急なリストラ」「③給与ダウン」を乗り越える対策としては、自分の「家計のバーンレート」をできるだけ下げておくことです。
スタートアップ業界では、会社が1ヵ月あたりに失うキャッシュの量のことを 「バーンレート」 と呼びます。「バーンレート」を低く保つことで、新たな資金調達をせずに事業を続ける期間を延ばすことができます。
これと同じで、月々にかかる家計の金額を、できるだけミニマムにしておくのです。
実際に僕は、スタートアップ転職希望者に 「住宅ローンの借り換えをすべきだ」 とアドバイスし、実行してもらったこともあります。
またあるとき、完全歩合制の外資系生命保険会社の営業職で、年収1億円を達成し調子に乗って馬主になった人から、「スタートアップ転職をしたい」と相談されたことがありました。彼への最初のアドバイスは 「まずは維持費がかかりすぎる馬を売ってください」 でした。
これは極端な例ですが、高級な靴やスーツ、交際費などに毎月お金をかけているという人で、「バーンレート」を下げる努力ができない人は、スタートアップ転職は難しいと思います。
年収やポジションは、あとからついてくる
スタートアップ転職に家族が反対したり不安がったりする場合には、3年間などのチャレンジ期限を決めて挑戦するという方法もあります。
実際に実力のある人は、2〜3年後には年収を転職前の水準に戻しているか、プラスアルファでもらうようになっています。実力があれば、年収はあとからついてくるのです。
教育系ベンチャー「すららネット」に勤めていた葉山勝正さんは、大手人材会社エン・ジャパンで「営業を徹底的に科学する」ことで営業手法を確立し、20代にして営業部長となり、150人もの営業部隊を率いたスキルを持ってスタートアップ転職をしました。
当時社員数10人ほどの「すららネット」に平社員として転職したので、年収は800万円くらいから550万円まで減ったのです。