「名札から値札へ」──自分の「値札」を言えるか。
経営コンサルタントの大前研一さんの言葉に 「名札から値札へ」 というものがあります。
プロフェッショナルな人は「仕事は何をしているの?」と聞くと、「マーケティングです」「脳外科医です」などと業務内容を答えます。
しかし、そうではない人は、「〇〇銀行に勤めています」「〇〇病院に勤務しています」などと社名・組織名を答えます。それではプロフェッショナルとして、どんな仕事をしているのかが伝わってきません。
会社名などの「名札」から、プロフェッショナルとしての市場価値、すなわち「値札」を言える人にならなければいけません。「値札」を言えないような人は、これからの時代どこへ行っても厳しいと思います。
さらには、「僕、東大卒なので採ってください」などと言う30代もいます。
「学歴じゃなくて、あなたのスキルは何なの?」
「大学卒業後から現在まで、あなたは何をしていたの?」
ということに明確に答えられることが重要です。
新卒採用では多くの学生にまだキャリアがないために、学歴で判断されることは往々にしてありますが、その弊害か、いつまでも学歴という「名札」で転職できると思っている人が、案外多いものです。
「私は〇〇(東証一部上場の大企業)に勤めていたので、スタートアップに転職できますか?」
「私は公務員ですがスタートアップに転職できますか?」
などと相談してきた人もいますが、スタートアップに転職できるかどうかは、社名や組織名などの「名札」ではなく、そこでどんなスキルを身につけたかによるとしか言えません。
スタートアップ企業側は必ず「あなたはどんな成果を出せるのですか?」と質問してきますので、それに答えられないと、転職活動はそこでおしまいになってしまうのです。
定量化できないスキルはスキルじゃない
これまで約2万人の職務経歴書を見てきた僕の経験からいえば、「定量化できないスキルはスキルではない」と感じています。
「成果を出せるスキル」は、すべて数字で表せなくてはなりません。職務経歴書のスキル欄に、「何事も諦めず努力することができる」「柔軟に対応することができる」といった記載をよく見かけますが、これはプロの世界ではスキルとして評価されません。面接で検証が難しく、「この人はプロではない」と思われてしまうので、むしろ書かないほうがいいでしょう。
採用する側からみれば、「その人が努力するかしないかよりも、成果を出せるかどうか」を見ています。
大企業出身者だと、コスト度外視で仕事をしてきた人もいるかもしれませんが、スタートアップでは経営に直結する定量的な成果として、売上や利益、コストについて厳しく意識しなければならないのです。
スタートアップは資金の余裕がなく、常に自転車操業なので、期限の意識なくコツコツと研究開発をするといったことは、基本的にはできません。
たとえば技術者ならば、新しく開発した技術に対し、「これはいつまでに、いくらくらいの市場規模をつくれる新技術だ」と自分で言えるようにしておかないといけないのです。
医療スタートアップなども、すぐれたビジネスシーズ(種)があったうえで、「3年以内に厚生労働省の認可を得て、それによっていくらの資金調達をします」などと、定量化したコミットが求められます。
藤岡 清高
株式会社アマテラス代表取締役CEO