(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフストラテジスト・石山仁氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

年初来高値に迫る米小型グロース

■米小型株(ラッセル2000)は23年3月にシリコンバレー銀行の経営破綻などの金融不安から大きく調整しました。その後も総じて戻りの鈍い展開でしたが、6月に入ってから戻り基調に転じています。スタイル別にみると、小型グロース(ラッセル2000グロース)が年初来高値に近付く勢いです。出遅れていた小型株ですが、小型グロースを中心にいよいよ動意づき始めているようです。

 

■今回は小型株の中心となる小型グロースが復活するための条件を、①株価水準:バリュエーション、②成長の源泉:企業業績、③成長の加速要因:M&A、の視点で整理します。

 

[図表1]小型株のスタイル別推移

満たされ始めた復活の条件

(1)株価水準:バリュエーション ~割高感が解消

■1点目はバリュエーションです。小型グロースの予想株価収益率(PER)は、20年3月の45倍から21年2月の189倍まで急激に上昇しました。中でも通信株セクターの予想PERは21年1月に360倍に達するほどの過熱ぶりでした。その後、通信株セクターの予想PERが大きく低下する中、小型グロース全体のバリュエーションも大きく調整しました。

 

■6月8日時点の予想PERは43倍です。予想PERの過去の平均値が45倍ですので、小型グロースの割高感は解消されたと考えられます。ちなみに通信株セクターの予想PERは30倍です。

 

[図表2]小型グロースの予想PER

 

(2)成長の源泉:企業業績 ~順調な利益成長

■2点目は企業業績です。小型グロースの1株当たり予想利益の伸びは23年が前年比▲2.1%、24年が同+35.0%、2年間の平均は年率+15.0%です。一方、大型グロース(ラッセル1000グロース)は23年が同+6.9%、24年が同+14.2%で、年率は+10.5%です。小型グロースは23年の減益予想を考慮してもなお利益成長率の高さがうかがえます。なお、小型も大型もバリューの利益成長は低位での推移となりそうです。

 

■四半期ベースでみると予想利益の伸びが一段と鮮明になります。小型グロースは23年4-6月まで前月比で悪化します。しかし、7-9月以降は順調な利益成長が予想されており、24年10-12月には22年10-12月の過去最高益に迫る見通しです。ちなみに、23年4-6月の1株当たり予想利益が8.1米ドル、24年10-12月が14.1米ドルです。PERが一定としても1.8倍の株価上昇となる可能性が示唆されます。

 

[図表3]スタイル別1株当たり利益の推移

 

[図表4]小型グロースと同利益の推移

 

(3)成長の加速要因:M&A ~陰の極

■小型グロースが成長するためにはM&Aも重要です。なぜなら成長を求める大企業が、特にテクノロジーを中心に企業買収を行うことが多いからです。過去においても産業構造の変化に応じ、ハイテク主導でM&Aが増加し、小型グロースをけん引しました。足元では、利上げの累積効果や金融不安、景気後退懸念から買収額は大きく減少しています。今後、米国の利上げが終了し、金融環境に安心感が広がれば、業績の好調さと相まって、ハイテク主導のM&Aが再び増加基調に戻る可能性は高いと思われます。

 

[図表5]小型グロースとM&A取引額

今後の展開:小型グロース株の復活は近い

■今回確認したように、小型グロースは、①バリュエーション面から割高感が解消している、②順調な利益成長が期待できる、③金融環境に安心感が広がれば成長をけん引するM&Aの回復が期待できる、など、復活の条件は整いつつあります。いよいよ小型グロース株の復活は近い、と考えられます。

 

(2023年6月12日)

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『6月に入り「年初来高値」に近付く勢い…整いつつある「小型グロース株」復活の条件【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

石山 仁

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフストラテジスト

 

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