鉄は全身をイキイキさせる酸素の運び屋さん
生きていくのになくてはならない酸素 、その酸素に鉄はとても重要な関わりをもっています。
私たちの体は何十兆個もの細胞からできており、その細胞一つひとつが呼吸をしながら生命活動を営んでいます。その原理は私たちの呼吸とまったく同じで、酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するというものです。
私たちが呼吸をして取り込んでいる酸素は、肺を通って血液に溶け、全身の細胞へと運ばれます。
その溶け方には2パターンあり、一つは酸素の分子のまま溶けている状態(物理的溶解)、もう一つは血液中の物質と結びついて溶けている状態(化学的溶解)です。
しかし、両者は運べる量に差があり、血液中の物質と結びつくほうが分子のままよりもより多くの酸素を運ぶことができるのです。
その血液中の物質こそが 「ヘモグロビン」 です。
赤い色素のもと「ヘム」と「グロビン」というたんぱく質からできていますが、たくさんの酸素と結びつく力があるのは「ヘム」です。ヘムが赤いのは「鉄」が含まれているからで、酸素を全身に運ぶのも「鉄」なのです。
血液100mLあたりでいうと、仮にヘモグロビンがなければ酸素は0.3mLしか溶けることができません。しかしヘモグロビンは、1分子につき酸素を運ぶ「手」が4つあって、酸素をがっちりつかみます。
これにより、血液100mLで約20mL、実に70倍もの酸素を運ぶことができるのです。
私たちの体には成人で1分間あたり4〜5Lの血液が心臓から押し出されています。そこに溶け込んでいる酸素の量は、先の考え方に当てはめると約1L。安静時に必要とする酸素量は約240mLといわれていますので、これだけあれば十分、まかなえるはずです。
ところが、もし鉄不足になってしまったら…?ヘモグロビンも不足し低値になってしまいますから、全身に運ばれる酸素の量も減ってしまいます。
そうなると体は大変!「酸欠だ(怒)」とさまざまな「不調のサイン」を出してくる、というわけです。
階段を上ると息切れしたり、ドキドキと動悸がしたりするのは酸欠による体からのSOS です。また、脳に十分な酸素が行きわたらなければ立ちくらみや頭痛がしてきますし、筋肉が酸素不足になると肩こりが起こりやすくなってしまいます。
血液のヘモグロビンは全身を巡って細胞に酸素を届けるとともに、細胞から出された二酸化炭素も回収します。静脈を通ってそれを肺に持ち込むと、酸素と二酸化炭素の交換が肺の中で起こり、ヘモグロビンは再び酸素を抱えて全身へ運搬する、といったように休む間もなく巡っています。
こんな働き者のヘモグロビンをすこやかな状態に保つのは”オーナー”であるあなたの役目です。鉄を豊富に含んだ食材を積極的に摂ることは、今すぐにでも始められるヘモグロビンへの思いやりあるケアといえるでしょう。
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