幸せやトキメキも「鉄」次第?神経伝達物質と深い関係
私の経験上、鉄不足が深刻でも、一見普通の女子と変わらない人がほとんどです。
ただ、よくよくお話を聞くと、ちょっとしたことで心が揺さぶられブルーになったり、何にも興味をもてなくなったりするなどの悩みをもっています。そんな「気分の不調」にも実は、鉄が深く関わっています。
怒りや不安、やる気や幸福感など私たちが日々抱くさまざまな感情は、脳内の細胞から細胞へと情報を伝えることで行われる精神活動の一つです。その細胞間の伝令のような役割を担うのが 「神経伝達物質」 と呼ばれるものです。
例えば、幸福感をつかさどるセロトニン、やる気を起こさせるドーパミンなど、一度は名前を見聞きしたことがある人も多いと思いますが、実はこれらも神経伝達物質の一つです。
いずれもたんぱく質が分解されてできるアミノ酸を材料としますが、つくられるにはナイアシンやビタミンB6、亜鉛、マグネシウムなどの複数のビタミンやミネラルが、いわばチームとなって働く必要があるのです。
そして鉄もその重要メンバーです。
ほかのビタミンやミネラルと一緒に楽しい、安心、前向きなど情緒に影響する神経伝達物質をつくっているのです。
なお、神経伝達物質は感情のみならず、記憶や思考などの脳の働き全般に関わります。鉄は学習能力に働きかける神経伝達物質といわれるグルタミン酸の生成にも関与している可能性も示唆されています。
図1は神経伝達物質の合成の経路を示したものです。
鉄はドーパミン 、 セロトニンの合成に必要なミネラルで、その下流のノルアドレナリン、メラトニンの合成にも不可欠なものです。
そのため、鉄が不足すると意欲の低下や集中力の欠如、心が不安定になるなどメンタル面へ悪影響が及ぶ恐れがあります。寝つきが悪い、何度も目が覚めるといった睡眠障害につながる場合もあります。 よく眠れないと夜間に行われる体や脳のメンテナンスが不十分となり、疲れが取れず頭もぼーっとするなど、ダメージをひきずってしまいます。
なお、鉄は神経細胞がつくられる過程でも必要とされます。
体の中で情報伝達を担う神経細胞は、情報を受け取ったり、送り出したりする突起をもっています。そのうち情報を送り出す突起を神経線維といいます。
神経線維には、むきだしのままの無髄神経線維と、ミエリンと呼ばれる膜に包まれている有髄神経線維の2種類があります。両者の大きな違いは情報の伝達スピードで、有髄神経のほうがミエリンによって周囲組織と絶縁することですばやく情報を伝えることができるのです。
実はそのミエリンの合成にも、鉄が関わっているといわれています。 鉄不足になると、すいすいと情報が伝わっていくはずの経路が滞り、頭がうまく働かない、なんてことになりかねないのです。
鉄は安定した精神状態や明晰な頭脳にも大きく影響しているのです。
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