●RBAは物価抑制のため利上げを決定、市場には予想外となったが次回も利上げの可能性を残す。
●BOCは利上げを再開、これも市場には予想外、政策見通しの手掛かりは今後、経済指標のみに。
●市場で6月FOMCは据え置き予想が大半、ただRBAとBOCの利上げ直後でもあり注目が集まる。
RBAは物価抑制のため利上げを決定、市場には予想外となったが次回も利上げの可能性を残す
オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は6月6日に理事会を開催し、政策金利であるキャッシュレートの誘導目標を25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げ、4.10%とすることを決定しました。キャッシュレートの4%台超えは、2012年4月以来、11年2ヵ月ぶりのこととなります。市場では今回、据え置きの見方が優勢だったため、2会合連続の利上げはサプライズとなりました。
RBAは声明で、「オーストラリアのインフレ率はピークを過ぎたが、7%という数字はまだ非常に高く、目標レンジ(2%~3%)へ戻るには、まだ時間がかかりそうである」と述べ、「今回の追加利上げは、インフレ率が合理的な期間内に目標へ戻る確信を強めるためのもの」と説明しました。また、フォワードガイダンス(金融政策の先行きに関する指針)に変更はなく(図表1)、次回7月4日の理事会における追加利上げの可能性を残しました。
BOCは利上げを再開、これも市場には予想外、政策見通しの手掛かりは今後、経済指標のみに
そして、カナダ銀行(BOC、中央銀行)は6月7日、政策金利である翌日物金利の誘導目標を25bp引き上げ、4.75%にしたと発表しました。BOCは3月に利上げを停止し、4月も据え置いていたため、利上げの決定は3会合ぶりのこととなります。なお、BOCの政策決定についても、市場は据え置きの見方が優勢だったため、利上げ再開はサプライズとなりました。
BOCは声明で、物価の高止まりと需要超過の継続に触れ、「インフレ率が目標の2%を大幅に上回って推移する可能性への懸念が強まっている」と述べ、「金融政策が需給を均衡させ、インフレ率を持続的に2%の目標に戻すには十分に引き締め的ではない」ため、利上げを決定したと説明しました。フォワードガイダンスでは、「政策金利をさらに引き上げる用意がある」との文言が削除され、政策予想の手掛かりは経済指標のみとなりました(図表2)。
市場で6月FOMCは据え置き予想が大半、ただRBAとBOCの利上げ直後でもあり注目が集まる
今回、RBAとBOCが相次いで利上げに踏み切ったことで、市場は改めてインフレの粘着性を強く意識したように思われます。来週は、13日、14日に米連邦準備制度理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、そして15日には欧州中央銀行(ECB)が政策決定理事会を、15日、16日には日銀が金融政策決定会合を開催しますが、市場の利上げ予想はECBのみで(25bpの利上げ)、FRBと日銀は据え置きの予想が大半です。
米国については、6月13日に発表される5月消費者物価指数の伸びが、おおむね鈍化するとの見方も多く、これが6月据え置き予想の一因になっているとも考えられます。それでも、RBAとBOCがインフレ抑制に強い姿勢を示した直後ということもあり、FRBが今回、どのような物価認識と政策判断を示すか、また、今後の政策運営について、どのような手掛かりを示すか、市場の関心は非常に高まっています。
(2023年6月9日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【速報】オーストラリア準備銀行とカナダ銀行が「予想外の利上げ」へ(ストラテジストが解説)』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト