(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では、もう長い間、給与がなかなか上がらず、銀行にお金を預けておいても増えません。そんななかで、可能な限りお金を守り、増やしていくには、正しい知識を身につけ、実行することが不可欠です。FPの頼藤太希氏と高山一恵氏が、著書『1日1分読むだけで身につくお金大全100 改訂版』から、生活に役立つ「お金の教養」について解説します。今回は、現在の日本の「平均給与」「退職金」の実態について解説します。

給与は上がりにくいって本当?

2021年の日本人の平均給与は443万円。多いと思われるでしょうか。それとも少ないでしょうか。

 

[図表1]は、2000~2021年における平均給与の推移のグラフです。

 

[図表1]平均給与の推移(2000~2021年)

 

これをみると、世界的に不況に陥った2008年の「リーマン・ショック」によって405万円まで下がった2009年よりはいくらか増えています。

 

しかし、2021年になっても、平均給与の額はまだ2000年の水準を回復していないことがわかります。ちなみに、男性の平均給与は545万円、女性の平均は302万円です。

 

また、正規雇用者の平均は508万円、非正規雇用者の平均は197万円。平均給与には、男女差や雇用形態の差もあるのです。

 

しかも、仮に給与が2倍になっても、手取りは2倍になりません。[図表2]は年収300〜2,000万円まで、年収が10万円増えるごとの手取り額を示したグラフです。年収が上がるごとにとくに所得税が大きく増えます。
 

※所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみで試算しています。
[図表2]年収300~2,000万円までの手取り額の推移 ※所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみで試算しています。

 

所得税の税率は「累進課税」といって、所得に応じて5〜45%まで、段階的に増えるためです。

 

つまり、給与は上がりにくいうえ、上がっても税金や社会保険料が高くなるため、手取りを増やすのも難しいのが日本の現状です。

 

■チェック!

この20年で平均給与は上がっていません。手取りは所得税・住民税・社会保険料によってさらに減っています。今後も当面きびしい平均給与額が続くでしょう。

退職金って減ってるの?

「退職金額の推移」によると、退職金制度を実施している企業は80.5%。従業員1,000人以上の企業であれば92.3%が実施している一方、30〜99人までの企業では77.6%と減っています。

 

退職金の金額も減少傾向です([図表3]参照)。

 

[図表3]一般企業の退職金額の推移

 

大学卒の場合、1997年には平均で2,871万円あった退職金が、20年後の2017年には1,788万円と、約1,080万円も減っています。

 

高校卒の場合でも、近年の退職金が減少しています。

 

一方、公務員は法律で退職金の支払いが規定されています。とはいえ、こちらも金額は不安定です([図表4]参照)。
 

[図表4]公務員の退職金額の推移(国家公務員)

 

たとえば、国家公務員の場合、2015年度には約2,181万円あった退職金が、2018年度まで約4年かけて、約2,068万円に減少しています。2021年度にかけ多少持ち直しているものの、民間に合わせて再び減少することも十分に考えられます。

 

2019年に「老後資金は2,000万円不足する」と話題になりました。その老後資金も、退職金に頼ることはできなくなってくると考えられます。

 

■チェック!

大卒の退職金の平均額は1997〜2017年までで約1,000万円減っています。公務員の退職金もゆるやかではあるものの、4年間で約100万円減っています。

 

 

頼藤 太希

株式会社Money&You

代表取締役

 

高山 一恵

株式会社Money&You

取締役

 

1日1分読むだけで身につくお金大全100 改訂版

1日1分読むだけで身につくお金大全100 改訂版

頼藤 太希・高山 一恵

自由国民社

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