経営権を引き継ぎコストカットに着手
立て直しのために進むべき方向は私のなかで見えていました。ただ、祖母の会社であるということや、親戚の役員との関係性がいわば足かせになってしまっていて、そのままでは何もできないという状態でした。
変化しなければ生き残ることは難しいという危機感が私にはありました。葬儀業の常識の枠に収まっていようとすることは、淘汰を待つことと同じだと考えていました。
しかし、祖母と役員の親族や既存の社員たちは会社の業績を戻したいと願ってはいても、それはあくまでも過去の延長線上の話であって、私が言うような業態自体を見直すような変化は求めていなかったのです。
私は祖母と親族の役員に対して、自分に株式を渡して経営を任せてもらいたいと要求し、そうでなければ自分が辞めると迫りました。
当時、会社は債務超過寸前で株価はほぼゼロであり、株の譲渡に税務上の問題はありません。また万が一、会社が倒産ということになれば個人保証をしている祖母や親族の役員の個人資産にも影響が及びます。
さらに私は、祖母と親族の役員に退職金を支払うことを約束しました。中小企業ではよく役員への退職金の代わりに会社に籍を何年か残し、役員報酬の形で渡すといったことを行います。業績が悪くなれば金額を減らし、役員が早く亡くなればそれ以降の支払いは不要です。しかし、それでは経営権の所在が曖昧になります。
結局、当面は祖母と親族の役員には実質上、経営から手を引いてもらい、会社再建の目途が立った段階で退職金を支払い、株をすべて私に渡してもらうことにしました。そして4年後にそれを実現しました。
実質的に経営を引き継いだ段階で私がまず着手したのは、コストカットです。祖母が持っていた会社名義のクレジットカードを停止し、役員報酬を大幅に引き下げました。
また、社長室や役員室をなくし、業務効率をアップするため事務スペースや葬儀用品などの在庫スペースを広くしました。ちなみに、現在も私は本社の倉庫を社長室として使っています。
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さらに取り組んだのが社員の意識改革です。それまで会社は祖母の「Myカンパニー」であって、社員も会社のためというより祖母の顔色をうかがうようなところがありました。祖母に悪気はないのですが、自分の言うことをよく聞く社員にはボーナスを多めに出すようなことをしていました。
これを正さないと会社の立て直しができないと考え、社員への説明と説得を始めましたが、既存の社員はなかなか話を聞いてくれません。会社がつぶれれば社員にとっても大きなマイナスなのですが、それまでのやり方を変えられないのです。
こちらは会社がつぶれるかどうかの瀬戸際です。腹をくくって社員ととことん話し合ったり、時には頑固な相手になんとかこちらの言い分を分かってもらいたくて、つい大声を上げたりすることもありました。