粗利益が大きいのはどちらか
続いては、「指数法則」のクイズです。
Q.ある会社に二つの商談が持ち込まれました。あなたはどちらの商談と契約するかを、すぐに決断せねばなりません。次の商談Aと商談Bではどちらが粗利益が大きいかを素早く判断してください。
商談A
仕入れ値:67円
売値:160円
個数:9億個
コスト:80%
商談B
仕入れ値:890円
売値:1,980円
個数:1,100万個
コスト:50%
ポイント
▼きりのいい数にする!
⇒四捨五入、切り上げ、切り下げを使う
▼単位の換算に注目!
⇒“一億(一〇の八乗、億は〇が八個)はオクターブ(八音)、オクトパス(タコの足は八本)の八”と覚える
▼指数法則を使う!
「ざっくり計算」のススメ
二つの商談の粗利益をそれぞれ計算します。粗利益は、売値から仕入れ値を引いた値(この分が会社の利益ですね)に個数とコスト計算(1―コスト)をかけて求めます。
しかし、実際の現場で素早く判断を下すには、電卓を取り出して計算する余裕はありません。素早く判断するには「どちらが粗利益が大きいか」がわかればよいのであって、「正確な計算」は必要ないのです。
こんな決断をぱっとできるカギとなるのが「ざっくり計算」です。
では、「ざっくり計算」のコツを見てみましょう。
商談Aの粗利益について考えます。まず、「売値-仕入れ値(160-67)」を「100」と見積もり、さらにそれを「102」とします。「個数9億」を「10億」として「10×108」とします。「1-コスト(1-0.8)」は「0.2」ですね。
さて、ここで指数法則の登場です。
「ざっくり計算」による粗利益は「102×10×108×0.2=10×102+8×0.2=2×1010(円)」となりました。
次に商談Bの計算です。同様に、まず「売値-仕入れ値(1980-890)」を「1000」と見積もり、さらにそれを「103」とします。
「個数1100万」を「0.1億」として「0.1×108」、さらにそれを「0.1×108=107」とします。また「1-コスト(1-0.5)」=は「0.5」ですね。
ざっくり計算による粗利益は「103×107×0.5=0.5×103+7=5×109(円)」となりました。
商談Aと商談Bの比較
商談Aの粗利益の指数部分は「10」、商談Bの粗利益の指数部分は「9」。商談Aのほうが指数が大きいので、大きい数だといえます。したがって、「ざっくり計算」によって「商談Aの粗利益のほうが大きい」ということがわかりました。
それでは、「ざっくり計算」と「正確な計算」の数値を比較してみましょう。次頁の図をご覧ください。大体の数字は合っていることがわかりますね。
このように、複雑な計算を回避するために、「きりのいい数」「単位の換算」「指数」を使うのは有効な手段です。
「いかにきりのいい数に直すか」「単位の換算を知っていて、しかも慣れているか」「いかに指数法則を使いこなすか」といった「計算ワザ」が必要になります。これは現場で実践してこそはじめて身につくものです。
普段の買い物でも、「グラムあたりではどちらのほうがお得か」なんて計算をしながら商品を吟味するのもいいでしょう。
「ざっくり計算」をどんどん試してみて、後からそれを評価し直すという経験を積んでみましょう。きっと「判断力」がアップして、学校、職場、家庭でも頼もしい存在になれることでしょう。
桜井 進
株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役