インボイス以外にも代わりとなる書類がある
インボイス発行事業者になると、買い手から要望があった場合、インボイスを発行する義務があり、インボイスの要件を満たした請求書などを買い手宛てに発行する経理業務が必要になります。
また、複数の書類を用いてインボイスの記載要件を満たす場合も認められます。口座引き落としなどで、取引時に請求書を発行していないものが該当し、複数書類で要件を満たしているかの確認が必要です。なおインボイスを発行した際は売り手側もその写しを保存する必要があるため、そのためのルールの整備も欠かせません。つまり、売り手に必要なのは「インボイス発行を求められるときに向けた準備」といえます。
インボイスの受領側にもさまざまな準備が必要
一方の買い手には、取引先から受領した請求書や口座引き落とし契約などの取引の証憑書類がインボイスに該当するか確認する作業が生じます。取引先がインボイス発行事業者でない場合、買い手は仕入時に支払った消費税を控除できないため注意が必要です。また、納税時の申告もインボイスの有無で変わります。申告内容を間違えると、自身の納付消費税が過少になり、税務調査時に過少申告としてペナルティを科される可能性があります。
なお、請求書などを電子データで受け取った場合、仕入税額控除を行うには、その電子データ(電子インボイス)の保存が必要です。保存に関する社内のルールを整備する必要があるでしょう。
★インボイス制度開始前に確認しておきたいこと
売り手
●インボイスの要件を満たした請求書(もしくは複数書類)の発行方法
●インボイスの写しの保管方法
買い手
●売り手から受け取った書類がインボイスに該当するかどうかの確認方法
●電子インボイスの場合、データの保存方法
★インボイス制度開始前の準備
売り手・買い手のどちらの立場も、経理業務に変更が生じます
【売り手の立場】…インボイス発行に向けた体制を整えることが大切!
●インボイス発行システムの導入を行う
◎従来発行していた請求書を「適格請求書(インボイス)」に変更する
◎店舗ではレジのシステムの改修が必要
●口座引き落としなど取引時に請求書を発行しない取引は、どの書類でインボイスの要件を満たすのかを確認する
●発行したインボイスの写しの保存ルールの整備を行う
【買い手の立場】…取引先の確認や保存ルールの整備が大切!
●取引先から受領した請求書がインボイスに該当するか確認する
●口座引き落としなど取引時に請求書を受領しない取引は、どの書類でインボイスの要件を満たすのか確認する
●インボイス発行事業者との取引か否かで、仕訳計上時、税区分を使い分ける
●受領したインボイスの保存ルールの整備を行う
★インボイスの登録率
取引先となる企業の約8割がインボイス制度への準備が完了しているのに対して、個人事業主は2割程度に留まります。取引先からの急な要望がある前にしっかり準備しておくことが大切です。
葛西 安寿
税理士