爆雷投下を5時間も…アメリカの非情なまでの執拗さ
【宮澤】ロシアの方が被害が大きかったという記録を持ち出してきてノモンハン事件の日本軍を持ち上げたりする人がいます。まず、軍事として語るのであれば作戦を水平に観察し、あれは失敗だったとはじめに言うべきです。
【矢作】ミッドウェー海戦では、諜報力に優った米海軍に日本海軍は空母を4隻とも沈められました。アメリカは3隻の空母のうちヨークタウンだけが沈められました。
その時の経緯なんですが、被爆して傾いているヨークタウンをハワイに連れて帰ろうとする艦隊に対して日本の伊号第百六十八潜水艦が魚雷を4発撃ち、3発がヨークタウンに当たり、1発がヨークタウンのすぐ横にいた巡洋艦に当たり、2隻とも沈めました。
アメリカはどうしたかというと、すぐそばに必ず潜水艦がいるというので、爆雷投下を5時間も続けたのです。伊号第百六十八潜水艦はヨークタウンの真下にいて5時間を耐えて離脱したというんですね。
評価すべきなのは、5時間も爆雷を投下し続けるアメリカの物量戦と根性あるいは執拗さ、あるいは徹底性です。日本には5時間も落とし続けるほどの量の爆雷がありません。駆逐艦1隻に数十個を積んでいるのが関の山です。
【宮澤】先ほども少し触れましたが、当時は殲滅戦という概念があったからアメリカは精強だったのです。
もちろん、例えば東京大空襲は国際法上認められるものではないし、民間人を巻き込むのは絶対にやってはいけないことです。しかしそれも、要するに、本土に1回やらないとぐだぐだ抗戦してくる日本陸軍は気がつかない、気づくまでやるぞ、ということです。
一度舵を切るとアメリカは怖い。B-29の大編隊が東京の東の一角がすべて丸焼けになるまで焼夷弾を落としました。彼らは、焼き尽くしたことをその目で見て確認しなければ、やったという感覚を持てないのです。
言い方を変えれば、そこまで腹がすわっているわけです。
【矢作】日本であれば、武士の情けだとかと言ってうっかり途中で手を抜いてしまうのでしょうけれども。
矢作 直樹
東京大学名誉教授
宮澤 信一
国際実務家
※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。
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