「年間最大84万円」が「全額所得控除」
小規模企業共済は、「中小企業基盤整備機構(中小機構)」が運営している個人事業主・中小企業経営者のための退職金の制度です。
「節税」といわれるゆえんは、掛金を最高で月7万円・年間合計84万円まで設定でき、その全額につき「所得控除」を受けられることです。
なお、後述するように、最後にお金を受け取る段階でも税制優遇があります。
このような積立の制度で全額所得控除を受けられるのは、他には「国民年金基金」と「個人型確定拠出年金」(iDeCo)のみです。この2つは合算して月6万8,000円(年81万6,000円)が上限です。
もし、小規模企業共済と併用すれば、毎年165万6,000円の控除を受けられるのです。
これらを利用せず銀行に預けておいたら、現在の超低金利ではまったくといっていいほど増えません。
したがって、こういった所得控除を受けられる制度を利用しないと、むしろ、損してしまうことになります。ましてや、年金不安であればなおさらです。
小規模企業共済のしくみとiDeCoと比べた優位性
◆小規模企業共済でいくら受け取れるか
小規模企業共済は、掛金を積み立てていき、最終的に「共済金」を受け取ることができます。
仕事をリタイアするにあたって「共済金」として受け取る限り、基本的には払った掛金の総額よりも増えて戻ってきます。
共済金の支払事由は以下の通りです。
【個人事業主の場合】
・共済金A:廃業した場合、死亡した場合
・共済金B:65歳以上かつ180ヵ月以上掛金を払い込んだ場合
・準共済金:法人成りして加入資格がなくなった場合
【法人の役員の場合】
・共済金A:法人が解散した場合
・共済金B:病気・ケガにより役員を退任した場合、死亡した場合、65歳以上かつ3年以上掛金を払い込んだ場合
・準共済金:法人の解散・病気・ケガ以外の理由で退任した場合、65歳未満で役員を退任した場合
【図表】をご覧ください。これは、掛金月額1万円で加入した場合に、共済金の種類別にいくら受け取れるかというシミュレーションです。
特に「共済金A」「共済金B」は、加入年数が長くなれば、その分だけ共済金の額が掛金よりも増えていきます。
20年間加入すれば「共済金A」なら16.1%、「共済金B」なら10.8%増える計算です。
30年間加入すれば、なんと「共済金A」は20.8%、「共済金B」は17.0%増えるということです。
所得控除を受けることによる節税の効果も合わせると、何もしなかった場合(税金を取られる+銀行に預けても増えない)と比べた実質的な増加率はもっと大きいということです。