「会社員の夫+専業主婦」なら、年金月額23万円程度
高齢者の多くが、老後資金の問題に頭を痛めている。サラリーマン(平均年齢44.5歳)の平均給与は月34.2万円、年収では554.9万円との統計がある。20~60歳まで平均的な給与を得ていた場合、厚生年金部分は10.3万円。国民年金は満額支給だとすれば、合計月16.7万円を受給できることになる。
高齢者に多い「会社員の夫+専業主婦」というパターンで、夫婦どちらも国民年金が満額支給なら、2人で23.1万円を手にできる。
無職・65歳以上の高齢者夫婦なら、1ヵ月の消費支出は23万円程度であるため、税金等で年金の10~15%が天引きされることを考慮するなら、預貯金の準備は必須だといえる。
忘れがちなのが、配偶者の死亡による年金減額だ。70歳の高齢者夫婦の場合、万一妻が亡くなれば、夫は自身の年金だけとなり、上述の例でいうなら月16.7万円となってしまう。
では、夫が亡くなったらどうなるか。妻は国民年金のほか、遺族厚生年金として、夫が受け取っていた年金(報酬比例部分)の3/4を受け取ることになる。単純計算すると、妻が受け取れる年金は14.1万円だ。
★妻を亡くした夫=月16.7万円
★夫を亡くした妻=月14.1万円
パートナーを亡くしたあとの年金額は、専業主婦の妻のほうが減少額が大きい。とはいえ、東京都23区の最低生活費(生活扶助基準額+住宅扶助基準額)が12万7,920円、住宅扶助額が5万3,700円という数字から見ると、持ち家なら年金だけで生きていくことができそうだ。もし賃貸なら、若干の預貯金も必要だが…。
「賃貸暮らしの高齢夫婦」は注意が必要なワケ
ただし、年金額と必要な預貯金の計算だけに終始してはならない。住まいの問題も重要だ。賃貸住宅へ入居するには、連帯保証人が必要だが、もし入居時に自分が80歳を超えていたら? きょうだいはもちろん、子どもも定年退職して、保証人になってくれる親族が見つからないかもしれない。
賃貸物件のオーナーは、リスクの高い入居者を回避したいもの。高齢者、ましてはおひとりさまとなれば「貧困」「孤独死」のリスクが頭をよぎる。そのため、態度や表現は柔らかくても「1人暮らしの高齢者になんか、恐ろしくて貸せるか」と断られるケースも多いのだ。そうなれば、いくらお金があっても住む場所は探せない。年齢を重ねてから、そんなつらい思いをすることにもなりかねない。
最近は、自治体のサポートもあり、高齢者も以前よりは部屋を借りやすくなっていると聞く。だが、将来の住まいの問題は、心身が元気なうちに対策を講じておきたいものだ。
自営業の夫+専業主婦のパターンに潜む「深刻リスク」
「会社員の夫+専業主婦」の場合は、パートナーと死別しても、多少の節約は必要になるものの、そこまで大きな問題は生じないかもしれない。
だが「自営業の夫+専業主婦」の場合は別だ。このパターンの夫婦の年金は、お互いに国民年金満額支給だとしても12.8万円に過ぎない。そして夫が亡くなったら、遺族年金はゼロ。ここが「会社員の夫」のケースと大きく違うところだ。
遺族基礎年金の受給対象者は「子のある配偶者」または「子」で、しかも子には「18歳になった年度の3月31日までにある」、または「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある」という条件つき。65歳以上の年齢で、自身の子がこの条件に該当するケースはまずあるまい。そうなると、妻の年金額は、月6.4万円だけとなってしまう。
自営業者本人であれば、この仕組みは当然知っているだろうが、専業主婦の妻のほうはどうだろう。万一知らなければ、あまりの減額の大きさに、何かの間違いではないかと衝撃を受けることになるのではないか。
前述のとおり、東京23区の生活扶助基準額は7万4,220円。住居費以外、生きていくのにこれだけのお金が必要だ。しかし、年金受給額はそれすら下回るのだから、対策は不可避だといえる。
すでに50代にさしかかり、老後生活も目前という人は、ねんきん定期便で年金の見込み額を把握したうえで、不足分をしっかり算出しよう。節約や今後の生活のサイズダウンでどうにかできる場合はともかく、そうでなければ、定年後の就労も選択肢になってくる。
すでに年金生活に突入している、あるいは、貯蓄も心許ないのであれば、働き続けるしかない。法改正により、高齢者の就労環境の整備も進んでいることから、資産状況に関係なく、体が動く限り働き続けるというのも新しいライフスタイルだ。
年金受給前なら繰下げ受給として年金を増やすのも手。75歳まで受給を繰り下げれることができれば、65歳で手にする年金の1.84倍の支給額となる。ある意味ギャンブルだが、勝っても負けても、とりあえず「命はあるがお金がない」というシリアスな状況は回避できるだろう。
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