(※写真はイメージです/PIXTA)

ロシア・ウクライナ戦争に台湾有事と、世界で地政学リスクが高まるなか、日本でも防衛費の増額がはじまるなど「対岸の火事」では済まされない状況です。こうしたなか、東京大学名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏は、近代の日本人が「ものを考えなくなった」と警告します。それはどういうことか、日露戦争や第二次世界大戦下にあった実例をとおしてみていきましょう。

おなじ「日本軍」だが…海軍と陸軍の“決定的な差”

【宮澤】その当時、日本はすでに列強国のひとつに数えられていました。しかし、ほとんどの近代国家の軍隊が近代戦の時代に入っていたにもかかわらず、日本の、特に陸軍は精神論を押し通した。少し過激な言い方かもしれませんが、強いて日露戦争はたまたま勝ったのです。

 

海軍にはセンスがありました。だから戦後、日本の軍隊が無条件降伏で武装解除されるなか、アメリカは、海軍については持っておけ、としました。駄目な陸軍は悪いけど解体するからな、と。

 

海軍については当時の海軍大将レベルの人たちと密約を結んで、解体命令はすぐに解除になるように運びました。そういうことがあったのです。

 

今の保守系の言論人のほとんどは、軍隊を一緒くたにし過ぎです。軍隊がどういう組織立てでどうやって機動するのか、その根本的なことがわかっておらずに、戦前の日本の軍隊を褒めそやします。

 

例えば、特攻隊です。特攻隊の方たちはすごいです。本当に日本を守っていただいたと感謝しております。ただし戦術としては、近代戦においては絶対に取り入れてはいけない発想です。

 

先ほどもお話のなかで出した単語で、「停戦終末点」といいますが、軍事における敗戦は、基本的に計算して出るものです。1942年6月のミッドウェー海戦敗北のあと、石油の備蓄量や兵員の規模などから計算して、指数として出てきていたはずです。にもかかわらず、陸軍が1945年までずるずると延ばしました。

 

山本五十六はじめ、海軍は基本的にはもうやめておいた方がいいと言っていました。政治と陸軍が悪乗りして徹底抗戦を主張した。精神論で押し切ってはいけない近代戦で精神論を言ったわけです。

 

戦前戦中を美化するのは危険です。常識的に考えることができなくなっている、つまり、どこかで思考がストップしている、ということです。

 

余談も余談ですが、大事なのは本音です。軍隊はそこそこ強かったし、初めの頃は頑張っていたけれども、上がとにかく馬鹿だった。兵の運用の仕方は間違っていたし、ジリ貧のところで負けを認めればそれでいいのに、そうしなかった。

 

戦争は喧嘩なのだから、負けたら許してくれるんです。それ以上は絶対にやらない。にもかかわらず、ずるずるやったから、最終兵器を落とされ、徹底的にやられたわけです。そういう本音から考え始めるべきではないですか。

 

 

矢作 直樹

東京大学名誉教授

宮澤 信一

国際実務家

 

※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

 

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※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

矢作 直樹

ワニブックス

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