(※画像はイメージです/PIXTA)

現在あまりクローズアップされていませんが、「退職金」(iDeCoを一時金で受け取る場合等も含む)に対する「増税」が行われる可能性があります。2022年10月時点で、政府の税制調査会において「退職所得控除」に関する有力な改定意見が提起されているのです。本記事では、現行の退職金に関する税制優遇措置の概要を紹介したうえで、政府税制調査会で出された改定意見の内容とその問題点について解説します。

改定意見の問題点

しかし、これには、以下の問題点が指摘されます。

 

【改定意見の問題点】

1. 「退職所得控除額」が転職を阻害する重大な要因になるとはいえない

2. 「サラリーマン」と「経営者・自営業者」を同一視できない

 

◆問題点1|「退職所得控除額」が転職を阻害する重大な要因になるとはいえない

第一の問題点は、「退職所得控除額」が転職を阻害する重大な要因になるとはいえないということです。

 

会社員が転職する際、その主な理由は、以下の2つに集約されます。

 

・今よりもスキルアップしたい

・職場の環境や人間関係に不満がある

 

転職する人は、多かれ少なかれ現状に不満を抱えており、環境を変えたいという希望を持っています。

 

特に、スキルアップ、給与アップのために転職しようとしている人にとっては、現職場にとどまって退職所得控除で税金が多少優遇されることよりも、より良い待遇を早く得るために転職する方がメリットが大きいといえます。

 

したがって、退職所得控除の制度の存在が転職の阻害要因となるという論拠には疑問があります。

 

◆問題点2|「サラリーマン」と「経営者・自営業者」を同一視できない

改定意見の第二の問題点は、もっぱらサラリーマンのみを想定している点に問題があります。

 

サラリーマンの退職金についてはともかく、経営者・自営業者には、「雇用の流動化」云々は無関係です。

 

経営者・自営業者の場合、「流動性」よりもむしろ、長年にわたって一生懸命に事業を継続して収益を上げ、事業を大きく育てることこそ重要です。

 

そして、それに対する報いとして、勤続年数に応じた退職所得控除の特典を与えることには、合理性があると考えられます。

 

なお、政府税調の委員のなかには退職所得控除の制度を改定することに対して慎重な意見もあります。特に、政府税調の会長である中里実氏(東京大学名誉教授)は、「長期的な人生設計の前提となる制度の安定性というのは一定程度重要だ」と指摘しました。これは、退職所得控除の制度趣旨を重視したものであるといえます。

 

中里会長の指摘するように、退職金等に関する税制は、老後の資金準備と密接に関わるものです。したがって、もし、今後、国会・政府がそのあり方に変更を加えるのであれば、その必要性・合理性について、退職所得控除の制度趣旨に立ち返った慎重な検討が求められます。

 

また、私たち有権者も、自分自身の将来に関わる問題であることを認識し、政府税制調査会、政府、国会における議論のなりゆきを注意深く監視していく必要があるといえます。

 

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