(※画像はイメージです/PIXTA)

現在あまりクローズアップされていませんが、「退職金」(iDeCoを一時金で受け取る場合等も含む)に対する「増税」が行われる可能性があります。2022年10月時点で、政府の税制調査会において「退職所得控除」に関する有力な改定意見が提起されているのです。本記事では、現行の退職金に関する税制優遇措置の概要を紹介したうえで、政府税制調査会で出された改定意見の内容とその問題点について解説します。

現行税制における「退職金」に関する税制優遇の内容

まず、現行の税制における退職金に関する税制優遇措置について解説します。

 

◆退職金、iDeCo・小規模企業共済等の「一時金」は「退職所得」

退職金を受け取ったら「退職所得」として所得税の課税対象となります。

 

この扱いは、文字通りの退職金のほかに、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「小規模企業共済」によって積み立てられたお金を「一時金」として受け取る場合も同様です。

 

ただし、「退職所得控除」によって税負担が軽減されています。

 

なぜなら、退職金は「在職中の給与の後払い」的な性格を有するとともに、老後の生活資金となるので、高い税負担を課すべきではないと考えられているからです。

 

◆勤続年数に応じた「退職所得控除」を受けられる

退職所得の計算式は、原則として以下の通りです。

 

【退職所得の計算式(原則)】

(退職金額-退職所得控除額)×2分の1

 

ただし、2022年以降、「勤続年数5年以下」の場合は、300万円を超える部分の額については「×2分の1」をすることができないというルールが採用されています。これにより、勤続年数が5年以下の場合についての退職所得の計算式は以下の通りです。

 

【退職所得の計算式(勤続年数5年以下)】

150万円+(退職金額-退職所得控除額-300万円)

 

「退職所得控除額」は勤続年数により決まっています。以下の通り、勤続年数が長くなるほど、退職所得控除額が大きくなるしくみがとられています。

 

【退職所得控除額】

・勤続20年以下:40万円×勤続年数 ※最低80万円

・勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 

このように、退職金については、勤続年数が長いほど税金が優遇されるルールがとられているのです。

 

政府税調で提起された「退職所得控除」の改定意見

これに対し、2022年10月18日に開催された政府の税制調査会において、一部の委員から、改定すべきとの意見が提起されました(政府税制調査会「説明資料(個人所得課税)」)。

 

現行制度では、退職所得控除額は勤続年数が長くなるほど高くなっていますが、それを、勤続年数で差を設けず、一律にすべきだというものです。

 

主たる理由は、勤続年数が長いほど退職金が税制優遇されるとなると「雇用の流動化」が阻害されるということです。

 

すなわち、現行の退職所得控除の制度があるせいで、「あと●年勤務すれば退職所得控除額が高くなるから、それまで退職しない」「長く勤務すれば退職所得控除額が大きくなるから転職せずに在職し続ける」ということになり、雇用の流動化が阻まれる…というのです。

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