(※写真はイメージです/PIXTA)

いまや「年金だけで暮らしていく」のは至難の業だが、かといって、多少の預貯金を持っていたとしても、急激なインフレに襲われれば、底をついてしまうリスクもある。令和の高齢者の現状と、今後の懸念点について見ていく。

年金生活の高齢者夫婦の家計、約2万円の赤字か

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、会社員の平均給与は月31万円(所定内給与額)、年収は496万円。男性のみの平均では、月34万円、年収で554万円程度、手取りは月26万~27万円程度。もし男性の収入のみで家庭生活を営み、子育てをするとなると、生活を相当切り詰めなければなるまい。

 

一方、厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給者数は4,023万人で、平均年金受給額は老齢厚生年金で月額14万5,665円。65歳以上に限ると、男性が16万9,006円、女性が10万9,261円だ。サラリーマンの夫と会社員経験のある妻なら月27万円程度、サラリーマンの夫と専業主婦の妻なら月22万円程度が、生活のベースとなる。

 

では、年金生活を送る高齢者夫婦の家計はどうなっているのか。総務省『家計調査 家計収支編』(2022年平均)によると、年金を含めた1ヵ月の収入は24万円程度で、年金は夫婦で22万円、可処分所得は21万4,426円となっている。それに対し、支出全体は23万円ほどで、消費支出は23万6,696円。毎月2万2,270円の赤字(可処分所得-消費支出)というのが、ごく平均的な高齢者夫婦の家計だといえる。

 

●夫婦ともに65歳以上の無職世帯の1ヵ月の家計

 

【実収入】246,237円(そのうち公的年金:220,418円)

【実支出】268,508円(そのうち消費支出:236,696円)

 

(内訳)

・食料:67,776円

・住居:15,578円

・光熱・水道:22,611円

・家具・家事用品:10,371円

・被服及び履物:5,003円

・保健医療:15,681円

・交通・通信:28,878円

・教育:3円

・教養娯楽:21,365円

・その他の消費支出:49,430円


出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2022年平均)

急激なインフレで、予想以上の預金の目減りが…

年金のみで暮らすには少々厳しい。ならば、貯蓄を切り崩していくしかないではないか。そこで、皆さんの貯蓄状況を見てみよう。

 

厚生労働省『2019年 国民生活基礎調査の概況』によると、「貯蓄がある」と回答したのは81.9%で、「1世帯当たり平均貯蓄額」は1,077万4,000円だった。高齢者世帯では、「貯蓄がある」と返答したのは80.1%で、「1世帯当たり平均貯蓄額」は1,213万2,000円だった。この数字を見る限り、平均的な高齢者世帯では、それなりの備えができていると推察される。

 

「貯蓄があるからセーフ」といいたいところだが、このところのインフレの状況を見ると、甘い見通しは立たないようだ。

 

「老後のため、がんばって貯金を準備してきましたが…」

「急激な物価上昇で、想定以上の速さで貯金が目減りしています。もう、底をつくのも時間の問題です…」

 

ある高齢者夫婦は語る。

 

帝国データバンクによると、2022年の平均値上げ率は14%。そして2023年はすでに平均18%と、前年を上回っている。仮に消費支出全体が18%上昇したと仮定すると、27万9,301円になり、単純計算で4万円の出費増となる。

 

止まらぬインフレで、生活が圧迫されていく高齢者たち。

 

「消費支出全体が18%増」はあくまでも単純計算だが、それでもこの状況下、不安要素としては極めて大きい。そして、対応策として考えられるのは「節約」もしくは「老骨に鞭打って働く」ぐらいしか選択肢はない。

 

現役世帯のみなさんは、いまの高齢者の方々が置かれた状況を見て、どう思われるか。「給与額を上げる」「節約して預貯金を増やす」というのも方法だが、このご時世、簡単ではない。そうなるとやはり「インフレ率を超える資産運用」も選択肢となってくるだろう。今後さらに懸念される年金減額に社会負担増。「自分の老後生活は、自分で守る」という意識が必要だといえる。

 

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