7年間で「学費6,000万円超」だが…「小・中学受験より割安」!? 日本の“お受験層”も流入する〈英国式ボーディングスクール〉

7年間で「学費6,000万円超」だが…「小・中学受験より割安」!? 日本の“お受験層”も流入する〈英国式ボーディングスクール〉
(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年から始まった、世界的名門ボーディングスクールの開校ラッシュ。富裕層からしても「超高額」な費用を払い、幼い我が子を全寮制の学校へと預ける…。日本人にとってなじみの薄い英国式ボーディングスクールが、ここ数年で支持を拡大しているのはなぜなのか。国内でいち早く開校したハロウインターナショナルスクール安比ジャパンを例に、日本の国際教育の現在地を見ていきましょう。教育ジャーナリストの佐野倫子氏が解説します。

富裕層が選ぶ「教育の場」に地殻変動

代々慶應幼稚舎に通うご家庭でも、お子さんに小学校受験をさせず、インターナショナルスクールやボーディングスクール(全寮制校)に通わせる方がでてきました。中学受験がハードになりすぎたため回避、小学生や中学生から英語や国際教育に全振りするご家庭もあり、小・中学受験より割安、という声も上がっています。

 

かつて小学校受験や中学校受験をしていた層に、「地殻変動」が起きたのはここ数年のこと。そのきっかけの一端を担うのが英国式名門ボーディングスクールの日本開校ラッシュです。

 

この記事では、教育ジャーナリストの佐野倫子氏が、「ボーディングスクールに超高額な学費を払ってでも通いたい」と富裕層が考える理由を探るため現地をレポート。またグローバル教育の潮流に造詣の深い竹中平蔵氏、ハロウ安比校校長ミック・ファーリー氏へのインタビューを通して、日本の国際教育の現在地を検証します。

開校ラッシュの先駆け、ハロウ安比校に迫る

写真提供/ハロウ安比校
[図表1]ハロウ安比校のキャンパス内 写真提供/ハロウ安比校

 

「明日からホリデイなので、生徒の多くは一時帰宅します。今日は保護者が、世界中からこの岩手県安比高原のキャンパスに集まっていますね。せっかく来ていただいたので、今夜は生徒が得意なことを披露する『タレント・ショウ』というイベントが開催されます。ピアノやチェロ、バイオリン、ダンス、バンド、歌、劇など…どんなことでもOK、それぞれが得意なことをコミュニティとシェアできる会です。友達とグループを組む子もたくさん。音楽コンクールで入賞している超実力派もいます」

 

取材中、そう語ってくれたのはハロウインターナショナルスクール安比ジャパン(以下、ハロウ安比校)の広報担当者。

 

ハロウ安比校は、日本における英国式ボーディングスクール開校ラッシュの先駆けとなった全寮制インターナショナルスクールです。イギリスの本校、ハロウスクールは450年の歴史を持つ英国の「ザ・ナイン」と呼ばれる世界有数の教育機関で、イートン校と肩を並べる英国の超名門校。

 

その流れを汲む10番目の海外姉妹校として2022年に誕生したハロウ安比校は、1年間の授業料と寮費が900万円超ということでおおいに話題になり、ご存じの方も多いでしょう。11歳から18歳(日本の小学校6年生から高校3年生)の7学年制なので、7年間通えば6,000万円以上となります。

 

今回はそのハロウ安比校に取材を申し込み、実際に生徒が暮らす寮や授業、食事や放課後の過ごし方を見せていただきました。

 

現在は一期生として11歳~15歳の男女約180人が学ぶキャンパスは広大で、ハイレベルな教育水準を叶えるために緻密に設計されています。

 

著者撮影
[写真2]ハロウ安比校のキャンパス内② 著者撮影

 

STEAM教育の舞台であるイノベーションセンター、クリエイティブアートセンター、講堂、室内プール、すべてが新築。建物を出ればゴルフ、テニス、フットボール、ラグビーなどあらゆるスポーツに取り組むことが可能です。また、安比高原のスキーリゾートに近接しているため、冬は授業後にシャトルバスに飛び乗り、スキーなどのウィンタースポーツ三昧。ハード面では圧巻の一言でした。

 

写真提供/ハロウ安比校
[写真3]屋外ではあらゆるスポーツに取り組むことが可能① 写真提供/ハロウ安比校

 

写真提供/ハロウ安比校
[写真4]屋外ではあらゆるスポーツに取り組むことが可能② 写真提供/ハロウ安比校

 

日本の学校のイメージに比べると、ぐっと少人数制で生徒たちは授業を受けています。講師は世界中から招聘された、各分野で実績がある面々で、ソフト面も最高の環境と言えるでしょう。

 

しかし取材中何よりも驚いたのは、これほどインターナショナルかつハイレベルでありながら、アットホームという言葉がぴったりの愛情と笑いにあふれた校内の雰囲気でした。

 

「3週間の春休みを終えて帰ってきた生徒に、休暇はどうだった? と聞いてみると、『早く学校に戻ってきて、友達に会いたかった。兄弟がいっぱいいるみたいな学校に戻ってきたかった!』という声がたくさんきかれました。入学した7ヵ月前は幼さもありましたが、今ではハロウ生らしく、自信に満ち、自立した表情を見せているのが何より嬉しいですね」(ハロウ安比校広報担当者)

 

果たして、子どもたちに「早く学校に行きたい!」と言わしめる環境とは、一体どのようなものなのでしょうか? さっそく詳細を取材してみました。

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佐野 倫子

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