大幅減益によりEPSが低下…海運、商社株の回復に期待
しかし、このEPSの低下要因は、前期に好況を謳歌した業界の反動減である。具体的には商社と海運だ。 バフェットの投資で注目されている商社株。大手総合商社の4社が純利益で過去最高を更新するなど前期は文句なしの好決算だった。
ところが、2024年3月期は一転して全社が減益を見込む。資源高の一服やコロナウイルス禍で増えた一時的な需要の反動などが要因だ。
同じ構図が海運株だ。前期は大手3社とも純利益で過去最高を更新したが、2024年3月期はそろって大幅減益を見込む。物流の正常化に伴い、高騰していた運賃が下落したことが要因だ。純利益の合計は前期比8割減の5,300億円に落ち込む。
ただし、商社にしても海運にしても、好調だった市況が悪化、しかもコロナ禍の特需が剥落したといえばそれまでのことだ。原材料高に苦しんできた自動車をはじめ、グローバル製造業は稼ぐ力が戻ってきた。市況産業の大幅減益によるEPS低下より、主力産業の業績回復に目を向ければ日本株はまだまだ買える。
PERも過去1年で見れば、割高に見えるが、アベノミクス相場開始以来の2013年から過去10年の平均PERは15倍強である。まだ過去平均の平均に戻る過程である。極端に割安ではないが、割高というわけでは全然ない。日本のゼロ金利を考えれば、日本株のバリュエーションはむしろまだ割安なままである。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員