中国経済の現状と今後の注目点「ゼロコロナ後の消費回復力」「不動産関連の成長回復力」「生成AIとIT企業の発展牽引力」の3点に注目

中国経済の現状と今後の注目点「ゼロコロナ後の消費回復力」「不動産関連の成長回復力」「生成AIとIT企業の発展牽引力」の3点に注目
(写真はイメージです/PIXTA)

世界経済成長に対する貢献度の高い中国経済。コロナ禍からの回復が期待されるなか、その動向に注目が集まっています。中国経済の現状と今後について、ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏が考察していきます。

4. 今後の注目点

1|ゼロコロナ後の消費回復力

第一に挙げられる注目点はゼロコロナ後の消費回復力である。中国政府は昨年末、事実上ゼロコロナ政策からウィズコロナ政策に舵を切った。それに伴いコロナ対策も感染防止から重症化防止に重点が移ったため、中国各地で感染爆発が起きた。そして死亡者も少なくなかったと見られる。

 

しかし、ここもとCOVID-19はほぼ沈静化、このままウィズコロナ政策が維持されれば、自由を制限されてきた人々が動き出すのは間違いないだろう。貨物輸送量と旅客輸送数の推移を見ると(図表13)、現在(2023年3月)の貨物輸送量は約47億トンとほぼコロナ前の水準に戻ったが、旅客輸送数は約7億人とコロナ前の半分に満たない。人流は今後さらに増えていくと見られる。特にコロナ禍で打撃を受けたコロナ悪化3業種(「交通・運輸・倉庫・郵便業」、「卸小売業」、「宿泊飲食業」)の実質成長率は、この第1四半期も前年同期比6.2%増にとどまっただけに、反動増の余地がかなり大きい。筆者は2023年通期で前年比10.0%増と予想している(図表14)

 

【図表13】【図表14】
【図表13】【図表14】

 

2|不動産関連の成長回復力

第二に挙げられる注目点は不動産関連の成長回復力である。昨年11月に中国人民銀行・中国銀行保険監督管理委員会は「金融による不動産市場の安定的で健全な発展のサポートを徹底する通知」(16ヵ条措置)を発表した。それを受けて中国の不動産株は反発に転じた(図表15)

 

【図表15】
【図表15】

 

但し、不動産株の反発が長続きしなかったことが示唆しているように、不動産関連が再び中国経済を力強く牽引するとの見方は少ない。中国政府は「不動産業の新たな発展モデルへの平穏な移行を後押しする」とは表明したものの、「住宅は住むためのもので投機対象ではない」というスタンスは崩していないからである。住宅主要購入層が減り始めていることも、成長回復力に期待できない背景にある(図表16)。実際、中国政府が1軒目住宅ローン金利の下限引き下げ・撤廃を促したことで住宅販売は底打ちしたものの、新規着工に踏み切るデベロッパーは少ない(図表17)

 

【図表16】【図表17】
【図表16】【図表17】

 

3|生成AIとIT企業の発展牽引力

第三に挙げられる注目点はバイドゥ(B)、アリババ(A)、テンセント(T)などIT企業の発展牽引力がどのくらい復活するかである。昨年12月に開催された中国経済工作会議では「デジタル経済を大いに発展させ、常態化監督管理レベルを高め、プラットフォーム企業が発展牽引、雇用創出、国際競争の中で力を発揮することを支持する」と表明した。これを受けてBAT株は底打ちした(図表18)。およそ2年に及んだIT業界を是正する取り組みにメドが立ったからである。実際、中国銀行保険監督管理委員会の郭樹清主席は「プラットフォーム企業14社の金融業務の特別改善は既にほぼ完了した」としている。

 

【図表18】
【図表18】

 

しかし、BAT株の反発が小幅なことが示唆するように、その発展牽引力には不透明感がある。筆者は2023年通期で前年比10%前後の安定成長と予想している。

 

なお、将来的にIT企業の発展牽引力を左右する要因として“生成AI(ジェネレーティブAI)”が浮上してきた。中国ではオープンAIのチャットGPTは使えないものの、中国にも北京智源(BAAI、2018年設立)が中国科学院、バイドゥ、バイトダンスなどの英知を集めて開発した悟道2.0(2021年発表)がある。こうした取り組みが新ビジネスを生み出すことになれば、中国IT企業の発展牽引力は一気に高まる。

 

他方、現在中国政府は「中国の特色ある社会主義」に適合した生成AIの在り方を検討中で、年内には管理弁法が定まる見込みである2。それが厳しい規制となれば新ビジネスの芽を摘んでしまう恐れがある。但し、厳しい管理下においても中国企業は「上に政策あれば、下に対策あり(上有政策、下有対策)」の精神を発揮して新ビジネスの開発に成功する可能性もある。今後の成り行きを注視したい。

 

*2:「国家互联网信息办公室关于《生成式人工智能服务管理办法(征求意见稿)》公开征求意见的通知」(2023年04月11日)

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年4月28日に公開したレポートを転載したものです。

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