「東証プライム市場」上場の6社に1社が「上場基準を満たさず」…日本の“株式市場再編”が骨抜きにされたワケ【経済ジャーナリストが解説】

「東証プライム市場」上場の6社に1社が「上場基準を満たさず」…日本の“株式市場再編”が骨抜きにされたワケ【経済ジャーナリストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業や名前の知られていない中堅企業にも良い会社はたくさんあります。 その見分け方がわかれば、転職等のキャリア形成、営業先の開拓、投資の是非の判断といったあらゆる局面で役立ちます。本記事では東洋経済新報社で編集委員を務める経済ジャーナリストの田宮寛之氏が、著書『ビジネスエリートが実践している 教養としての企業分析』(自由国民社)から、優良企業を見分けるための「企業分析」のポイントを解説します。

市場再編によって上場の「基準」はどう変わったか

◆上場ルールを改正

市場再編とともに基準改正も行なっています。

 

以前は東証一部へ上場するためには時価総額が250億円以上必要でしたが、上場廃止基準は10億円割れでした。いったん上場してしまえば、よほどのことがない限り上場廃止にはならなかったのです。

 

これでは企業が上場をきっかけに「さらに成長しよう」と意欲を持つことはないでしょう。そこで、今回の改正では上場基準と廃止基準を同じにしました。時価総額100億円を割れば上場廃止です。

 

また、これまでは一部上場へのルートが2つあり、基準が統一されていませんでした。

 

非上場企業が直接一部上場を目指す場合は250億円以上の時価総額が必要でしたが、東証二部やマザーズにいったん上場してから、一部へ転部する場合に求められる時価総額は40億円以上でした。

 

その差はあまりにも大きく、日本証券取引所グループの清田瞭CEOは『週刊東洋経済』のインタビューで「一部上場への裏口を認めるようなものだった」と反省の弁を述べています。今回の改正でこうしたルートはなくなりました。

 

60年ぶりの市場区分改正ですが、問題点もあります。新市場がスタートした2022年4月頃は新聞や雑誌で多くの批判記事を見かけました。次項では問題点について解説します。

上場資格のない企業がプライム市場に上場している?

◆想定よりも緩い上場基準

市場再編の検討を始めたのは、東証一部上場企業が多すぎる、しかも優良企業とは言えない企業も多く存在する、そんな状況をなんとかしよう、との機運が高まったからです。

 

日本で最高の市場には、最高の市場にふさわしく、一定以上の規模を持ち、グローバルに活躍する企業を集める予定でした。

 

ところが、最高の市場であるはずのプライム市場には、プライムという言葉にふさわしくない企業が多数存在します。

 

2022年3月31日時点で東証一部上場企業は2,176社ありましたが、そのうち1,839社がプライム市場に移行しました。

 

なんと一部上場企業の85%がプライムへ移行したのです。

 

これでは市場再編と言えません。相変わらずグローバル大企業とそうでない企業が混在しています。

 

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ビジネスエリートが実践している 教養としての企業分析

ビジネスエリートが実践している 教養としての企業分析

田宮 寛之

自由国民社

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