市場再編によって上場の「基準」はどう変わったか
◆上場ルールを改正
市場再編とともに基準改正も行なっています。
以前は東証一部へ上場するためには時価総額が250億円以上必要でしたが、上場廃止基準は10億円割れでした。いったん上場してしまえば、よほどのことがない限り上場廃止にはならなかったのです。
これでは企業が上場をきっかけに「さらに成長しよう」と意欲を持つことはないでしょう。そこで、今回の改正では上場基準と廃止基準を同じにしました。時価総額100億円を割れば上場廃止です。
また、これまでは一部上場へのルートが2つあり、基準が統一されていませんでした。
非上場企業が直接一部上場を目指す場合は250億円以上の時価総額が必要でしたが、東証二部やマザーズにいったん上場してから、一部へ転部する場合に求められる時価総額は40億円以上でした。
その差はあまりにも大きく、日本証券取引所グループの清田瞭CEOは『週刊東洋経済』のインタビューで「一部上場への裏口を認めるようなものだった」と反省の弁を述べています。今回の改正でこうしたルートはなくなりました。
60年ぶりの市場区分改正ですが、問題点もあります。新市場がスタートした2022年4月頃は新聞や雑誌で多くの批判記事を見かけました。次項では問題点について解説します。
上場資格のない企業がプライム市場に上場している?
◆想定よりも緩い上場基準
市場再編の検討を始めたのは、東証一部上場企業が多すぎる、しかも優良企業とは言えない企業も多く存在する、そんな状況をなんとかしよう、との機運が高まったからです。
日本で最高の市場には、最高の市場にふさわしく、一定以上の規模を持ち、グローバルに活躍する企業を集める予定でした。
ところが、最高の市場であるはずのプライム市場には、プライムという言葉にふさわしくない企業が多数存在します。
2022年3月31日時点で東証一部上場企業は2,176社ありましたが、そのうち1,839社がプライム市場に移行しました。
なんと一部上場企業の85%がプライムへ移行したのです。
これでは市場再編と言えません。相変わらずグローバル大企業とそうでない企業が混在しています。
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