正社員の椅子をつかんだ、その先の「明暗」
就職氷河期世代とは、景気低迷により企業が新卒採用を控えた1993年~2005年卒の人達を指す。
日本が好景気に沸いていたころは「超」売り手市場が続き、企業間では壮絶な学生争奪戦が繰り広げられ、多くの学生たちは、それほど苦労することなく有名企業からの内定を手にすることができた。企業側も、大切な学生からの「内定辞退」を回避するため、海外リゾートでの研修旅行や豪華ディナーへの招待など、ご機嫌取りに必死だったのである。
ところが、平成バブルがはじけ状況は一転。企業は手のひらを反すかのように採用を絞り込み、難関大学の学生すら就職にあぶれるように。有効求人倍率は1992年の1.08倍から0.76倍にまで低下し、2005年まで「1倍」を割り込む状況が続いた。
社会に出る前から寒風吹きすさぶ厳しい状況に置かれた就職氷河期世代は、その多くが「非正規社員」としての社会人デビューとなった。そしてなお、正規の従業員の椅子をつかめないまま、重労働・低収入にあえいでいる人たちも多い。
しかし、なかには2006~2007年の「瞬間的な雇用環境改善」のタイミングをつかみ、なんとか正社員に勝ち上がった人たちもいる。そこでチャンスをつかめなかった人たちは、再び訪れた景気低迷の波にのまれ、その状況が今も続いている格好だ。
だが「正社員=勝ち組」とは一概にはいいきれない。社会保険が完備している程度で、非正規とさして変わらない給与額のところも少なくないのだ。
今年で48歳という男性は自嘲気味に語る。
「地方から上京し、有名私立大学に入学しました。大学生活は希望にあふれていましたが、就職で躓き、その後は非正規ばかりです。履歴書は何枚書いたか覚えていません」
「30歳前に、ようやく中小企業の正社員となりました。しかし、月収は18万円で、昇給は毎年1500円か2000円ぐらい。これって昇給といえるんですかね? もう笑うしかない。僕なんか、負け組のなかの負け組ですよ」
現在の月収は22万円だという。東京都下の築40年のアパートに暮らし、節約を重ねているものの、日々の生活に精いっぱいで、貯金する余裕はないという。
同じ氷河期世代でも…埋まらない「給与格差」の問題
どうして氷河期世代はここまで割を食ってしまったのか。
理由のひとつに、新卒採用にこだわる日本企業の体質があげられる。新卒カードを失えば、その後の道は極めて険しい状況だ。正規として就職できなかったことで、スキルやキャリアを思うように積めないにもかかわらず、企業からはその両方があることを就職の条件とされてしまう。そのため、なかなかキャリアを詰める仕事に就けず、非正規として働き、年齢を重ねるうちに、企業が求める人材からかけ離れた姿になってしまう。
「もちろん、うまいこと途中から正規社員になって、リベンジを果たした連中もいますよ。でも…そうなるのは、本当に難しい」
就職氷河期世代であっても、新卒時で希望通りの企業に就職した人や、非正規から希望通りの職業に就いた人も当然いる。
仮に大企業勤務のサラリーマンなら、40代後半になれば平均月収は51万円、年収で885万円。上述の、非正規から中小企業の正規職員となった男性とは比較にならない「圧倒的な格差」が存在する。
また、就職氷河期世代には、起業家として成功している人たちも多い。彼らは日本の従来の社会システムに見切りをつけ、自らの手で成功をつかんだパイオニアだ。
だが、すべての人たちに、起業家としての適性や、天文学的な競争率を勝ち残る能力があるわけではない。
不景気を理由に、企業も政府もこれまでスルーしてきた「氷河期世代」の厳しい状況。しかしその結果、社会は少子高齢化の加速度的な進展という、手痛いしっぺ返しを受けている。これからの日本は、医療費・社会保障費がさらに膨らむことが確定的とみられている。
氷河期世代が、ほかの世代同様、適正な収入を得て、家庭を持ち、子どもを育てていたなら…。氷河期世代に手を差し伸べなかったツケが、いま、日本社会全体に回ってきたといえるのではなかろうか。
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