(※写真はイメージです/PIXTA)

中国が定期的に“不穏な動き”をみせる尖閣諸島問題。日本は「遺憾の意」を示すものの実質放置。同盟国であるアメリカも我関せずの姿勢です。日本人としてこうした状況に不安を覚える人も少なくありませんが、東京大学名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏は、こうした対応にはワケがあるといいます。詳しくみていきましょう。

尖閣諸島の問題は「石原慎太郎」が戦犯?

【宮澤】尖閣諸島については、石原慎太郎氏の挙動に問題があったと思います。

 

それまでどっちつかずの議論にしておいたところを、いきなり都有地にすると言い出した。保守系の国会議員や保守系メディアでうまく儲けてやろうなどと考える人たちが、それをネタにして動きました。悪目立ちしてしまったんですね。

 

尖閣諸島にたむろしている人民解放軍に対しては、海兵隊が行く(気があるのかは断定しませんが)までもありません。第一列島線と南シナ海と東シナ海及び日本海の方面に核を積んでいる原子力潜水艦が何隻潜っていると思うんですか、という話です。

 

『世界を統べる者(ワニブックス)』本文より抜粋
中華人民共和国はまず第一列島線の突破を目論む 『世界を統べる者(ワニブックス)』本文より抜粋

 

それに、いざとなったら24時間以内に駐日米軍がすべて集結します。尖閣諸島の問題は、北方諸島の問題とはまったく意味が違います。北方領土は完全に国際紛争化します。

 

尖閣諸島の場合は日本の領土ですから侵犯された場合には国際法にのっとって集団的自衛権が自動的に発動されます。集団的自衛権を発動したくない、憲法9条がある、などと言ったとしても、アメリカは、日米安保があると言って強制的に発動します。

 

かけがえのないパートナーである日本を守るために、日本が動けないなら俺らが動く、と言ってバシッとやります。中華人民共和国が警戒しているのは常にそこのところです。

 

尖閣諸島のことでひとつ問題視すべきなのは、海上保安庁が海上保安活動するにおいては警察力の延長線上でしかない、ということです。つまり、海上保安庁が中国船を拿だ捕ほすれば済む話だ、ということなんですね。

 

アメリカだったら間違いなく、軍艦に機銃が備えられているので射殺を含めていろいろやってしまいます。さすがに日本でそれやるとよろしくないということでアメリカはやっていませんが、語弊があるかもしれませんがやってできないことはありません。

 

問題は、海上保安庁ができないということは海上自衛隊にはなおのことできないということです。

 

射撃には警告、威嚇、命中の3種類があります。警告射撃は、近寄らないでね、そういう法令がありますよ、という射撃。威嚇射撃は、致命的にならないところに当ててやる射撃。命中射撃は、おまえは完全に敵だからぶっ殺す、という射撃です。

 

海上保安庁は警告射撃がせいぜい最近できるようになったのですが、警告射撃をやったところで、人民解放軍はそんなものは慣れてしまっているから平気で来てしまいます。ここに海上保安庁の限界があります。

 

さきほど軍事化が必要だと言ったのはここのところで、本当は海上自衛隊が日本海軍としてガツンとやらなければ駄目なんです。

 

交戦規定(ルール・オブ・エンゲージメント、Rules of Engagement、ROE)に基づいて、相手に対して宣言をしたあと、自衛権の行使ということでやってしまえばよい。少なくとも拿捕するくらいのことはしてもいいのではないですか。

 

軍事化というのは、簡単に言うと、原子力潜水艦でもいいし空母でもいいのでエクイップメント(装備)を持ってしまえばいい、ということです。法律から変えていくという式は、憲法改正の話と同様にちょっと難しいと思いますね。

 

今の状況を見る限り、別に軍事費が足りないということはないのだけれども、軍事費をもうちょっと別の方向に使わなければいけない。無駄な出費ばかりをしているような印象はあります。

 

次ページ日本経済を取り仕切るアメリカとの“ある協定”とは

※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

矢作 直樹

ワニブックス

「日本にウクライナ侵攻の悲劇は起こらない!」……アメリカが諸外国の侵略から日本を絶対に守る理由とは? 東京大学名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏が、6つのキーワードから世界…

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