(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●直近6回の米利下げ局面において、初回の利下げから半年間で、日経平均がどう動いたかを検証。

●日経平均は米利下げから半年間ダウ平均と同方向に動く傾向、上昇か下落かは米景気がカギに。

●米利下げ後、半年以内に米景気後退入りなら日米ともに株安、回避なら株高の傾向がみられる。

直近6回の米利下げ局面において、初回の利下げから半年間で、日経平均がどう動いたかを検証

4月17日付レポートでは、もし米国が利下げを行った場合、米国株はどのように反応するか、過去の事例を踏まえて考察しました。今回は、日本株のケースについて考えてみます。具体的には、直近6回の米利下げ局面における初回の利下げ日、すなわち、①1989年6月5日、②1995年7月6日、③1998年9月29日、④2001年1月3日、⑤2007年9月18日、⑥2019年7月31日を基準に、6カ月後の日経平均株価の騰落率を計算します。

 

参考までに、ダウ工業株30種平均の動きを確認しておくと、①は半年間で11.0%上昇、②は10.9%上昇、③は21.7%上昇、④は3.4%下落、⑤は10.0%下落、⑥は5.2%上昇でした。下落したのは6回のうち④と⑤の2回ですが、⑤については、当時はサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の問題が表面化した時期で、その後の金融危機に発展した経緯もあり、2ケタの大幅下落となっています。

日経平均は米利下げから半年間ダウ平均と同方向に動く傾向、上昇か下落かは米景気がカギに

改めて、日経平均の騰落率を計算すると、①は半年間で11.5%上昇、②は35.1%上昇、③は18.1%上昇、④は7.0%下落、⑤は22.4%下落、⑥は7.8%上昇、という結果になりました(図表1)。つまり、ダウ平均と同じく、6回のうち上昇したのは、①、②、③、⑥の4回で、下落したのは④と⑤の2回でした。したがって、ダウ平均と日経平均は、初回の米利下げから半年間、同じ方向に動く傾向があるように見受けられます。

 

[図表1]米利下げ後半年の日経平均株価騰落率

 

ただ、米利下げ後に日米の株価が上昇するのか、下落するのかを判断するには、過去6回の利下げ局面の状況を、もう少し詳しくみていく必要があると思われます。そこで、各局面について、利下げに踏み切った理由と、最初の利下げから半年以内の景気後退入りの有無を確認します。結果は図表2の通りで、利下げの理由は様々ですが、利下げ開始後、半年以内に景気後退入りなら株安、景気後退回避なら株高、という傾向が読み取れます。

 

[図表2]米利下げ理由と米景気動向

米利下げ後、半年以内に米景気後退入りなら日米ともに株安、回避なら株高の傾向がみられる

なお、仮に米国がこの先、利下げに踏み切ったとすれば、昨年3月以降の大幅利上げ後の利下げ、となるため、利下げ理由の近い、②や④における株価の動きが想定されます。この場合でも、やはり米景気後退入りの有無が、株価の方向性を決める重要な要素になると考えられ、利下げ開始後、半年以内に景気後退入りならダウ平均、日経平均ともに下落、景気後退回避なら、ともに上昇という動きが予想されます。

 

しかしながら、景気後退入りとなっても、金融危機のような状況でない限り、ダウ平均、日経平均とも、⑤のような2ケタの大幅下落に至るリスクは比較的小さいのではないかと思われます。過去の経緯を振り返ると、ダウ平均と日経平均は、初回の米利下げから半年間、同方向に動く傾向があるものの、方向性を決めるのは、米利下げそのものではなく、その時の米景気動向によるところが大きいと推測されます。

 

(2023年4月24日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『過去「米国が利下げ」した際に、日本株はどう反応したか【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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