「嫌な経済ニュース」続きで安眠できない昨今…投資家はどうすれば?
-----------------------------------
【目次】
1.こんな時こそ原点回帰、大きく構えて臨む「バリュー株投資」
2.「バリュー株投資」に注目するこれだけの理由
3.抜群のトラックレコード「中小型バリュー株」
-----------------------------------
睡眠改善をうながす乳酸菌飲料が人気です。ストレスが原因で寝不足の方も少なくないこのご時世、わたしたちの眠りを更に浅くさせているのが、真夜中に流れる海外発の嫌な経済ニュースの数々です。
コロナ禍に始まり、ロシアのウクライナ侵攻、高インフレ、そして今年3月には突然の金融機関の破綻など、まさに投資家は「枕を高くして寝られない」状況が続いています。そんなわたしたちの生活の質(QOL)を改善するには、お金をかけて乳酸菌飲料をいただく以外に良い手立てはないものでしょうか。
1.こんな時こそ原点回帰、大きく構えて臨む「バリュー株投資」
■欧米ではインフレの高止まりが続く一方、世界的な金融不安もあり、市場の金利見通しは大きく揺れ動いています。足元では、各国金融当局による迅速な対策が奏功して金融不安は後退しつつあるように見えます。しかし、これまでの金融危機では、小さなストレスが徐々に時間をかけて金融システム全体に及ぶパターンが繰り返されてきました。このため、危機の火種が完全に鎮火されたと考える向きは、むしろ少数派かもしれません。
■こうした状況で私たち投資家に求められるのは、長期的に確信度の高い投資手法、いうならば「王道」に立ち返り、大きく構えてしっかりとリスクをとっていく投資姿勢ではないでしょうか。そんな「腰のすわった長期投資」と相性が良いのが、企業価値に基づく「バリュー株投資」です。
■世界中のプロたちがシノギを削る市場では情報が瞬時に伝わるため、好業績株や注目の投資テーマは人気先行となりがちで、投資リターンにつながらないケースも少なくありません。一方、業績や財務諸表からみた企業価値と株価を比べ、割安な銘柄に投資する「バリュー株投資」は、その良好な投資リターンもあって、堅実なプロ好みの「投資の王道」といって良さそうです。
2.「バリュー株投資」に注目するこれだけの理由
<「バリュー株」の「バ」はバフェットの「バ」?>
■「バリュー株投資」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏ではないでしょうか。バフェットの投資スタイルはシンプルで、①会社を徹底的に調べ、②確固たる収益基盤がある優良銘柄に狙いを定め、③株価が割安な時に集中投資する、というものです。そんなバフェットの真骨頂ともいえるのが、リーマンショックの最中に行った、米投資銀行ゴールドマンサックスへの巨額投資です。まさに「落ちてくるナイフ」の柄の部分をつかんで見せた格好ですが、バフェットの慧眼や胆力、そしてバリュー株投資の有効性を世界に印象付ける結果となりました。
■先日の米地銀破綻をきっかけとした世界的な金融市場の動揺を受けて、米政府がバフェットに接触していると報じられています。まさに「バフェットの威光を借りて市場の不安を鎮めたい」、との米政府の思惑が透けて見えます。今後、金融市場の動揺が更に広がりを見せ、暴落する市場でバフェットが買い出動するような局面があれば、投資タイミングを見極める上で重要なヒントとなりそうです。
<プロならみんな知っている、人気の「グロース」、実力の「バリュー」>
■「安く買って高く売る」、そんなバリュー株投資が儲かるのは至極当然のことかもしれません。しかし、バフェットのように「良い株を安く買う」には、市場に蔓延する短期的な「ノイズ」に心を乱されることなく、果敢に投資を行う必要があります。そうしたバリュー株投資につきまとう「辛さ」を和らげてくれるのが、長期的に良好なパフォーマンスです。
■1980年以降の日本株式市場を振り返ると、バリュー株投資のリターンは年率で+9.2%となり、グロース株の同+5.6%を大きく上回っています。一方で、バリュー株投資のリスク(標準偏差)は22.3%で、グロース株の24.5%を下回っています。更に、暦年で見たバリュー株のグロース株に対する勝率は約7割に達しており、バリュー株が優位となっています。わたしたちはつい「華々しい成長ストーリー」や「好業績」に目を奪われがちですが、こと日本株に関する限り、冷静な企業分析をもとに割安株をコツコツと買っていく「バリュー株投資」が、圧倒的に有利であるとすることができそうです。
<平時の「グロース」、有事の「バリュー」>
■「バリュー株投資」の有効性は、市場が混乱する「有事」でも発揮される傾向があります。バブル崩壊を含む4回の主要な金融危機において、バリュー株の高値から安値までの下落幅(ドローダウン)は平均▲44.5%と、グロース株の同▲52.6%よりも小幅にとどまっています。
■そもそもグロース株は、将来の成長期待を織り込み株価が形成されているため、市場のセンチメントが楽観に振れやすい「平時」には好調でも、「有事」にはそのもろさが露呈することが少なくありません。現在の市場環境が平時か有事かは見方の分かれるところですが、数十年ぶりの高インフレ、急激な金融引き締め、欧米での金融機関の突然の破綻、そして地政学リスクの高まりなどを考えると、少なくとも「平時」といえる状況ではなさそうです。
<万年割安株の変化が追い風、新しい「バリュー株相場」>
■ここもとバリュー株への新たな追い風として注目されているのが、株価純資産倍率(PBR)が低い企業に対する圧力の高まりです。東京証券取引所は先日、PBR1倍割れの上場企業に対し、PBRが1倍を下回っている要因の分析と、具体的な改善策を開示するよう求めることを決めました。
■また、米エリオットマネジメント、英シルチェスターインターナショナル、エフィッシモキャピタルといった日本で積極的に活動している主要なアクティビストファンド、いわゆる「物言う株主」は、こうした低PBR企業を狙い撃ちにしています。これまで低株価、低PBRに甘んじてきた万年割安企業は、東証とアクティビストの挟み撃ちに合い、経営効率の改善や経営改革に取り組まざるを得ない状況に追い込まれています。
■現在、日本株のPBRは諸外国との比較で低位にとどまっており、その意味では「経営改善の余地は大きい」といえそうです。このため、PBR1倍割れ企業の必死の経営改革を追い風とした新しい「バリュー株相場」は、息の長い投資テーマとして注目することができそうです。
3.抜群のトラックレコード「中小型バリュー株」
■長期的に投資リターンが好調なバリュー株投資ですが、中でも有望なのは「中小型バリュー株投資」といえそうです。中小型株は流動性の点から大手機関投資家が手掛けづらく、プロたちのリサーチも行き届きにくい傾向があります。このため、中小型バリュー株の中には有望な銘柄が割安で放置されているケースも多く、徹底的な企業調査に基づくバリュー株投資と相性の良い投資対象といえそうです。
■また、規模が大きい大型株と比べて、中小型株は「伸びしろ」が大きく、国内のニッチな市場で高いシェアを有している企業も少なくありません。このため、海外発の景気の変調の影響を受けにくい点も、魅力の一つといえそうです。
■バリュー株の有利さに、こうした中小型株特有の利点が加わることで、中小型バリュー株投資は1980年以降、年率13%近いリターンを記録して他の投資スタイルを圧倒しています。もちろん過去のデータが将来の高リターンを保証するものではありませんが、割安株が上昇すると「割安株でなくなり」、中小型株が上昇すると時価総額が増加して「中小型を卒業する」ことから、他の投資スタイルとの比較で、中小型バリュー株投資は構造的な優位性があると見て良さそうです。
まとめ
投資家にとって、ストレスはさけられないものかもしれません。とはいえ、心身の健康を維持しつつ資産形成を進めていく上では、「バリュー株投資」をうまく活用して、長期運用に徹することが得策といえそうです。一見すると地味な印象を与える「バリュー株投資」ですが、最近は低PBR企業への圧力の高まりもあって、更なる追い風が期待できそうです。中でも、抜群のトラックレコードを誇る「中小型バリュー株投資」は、その構造的な強みもあり、今後も大いに期待したいところです。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『今「バリュー株投資」が気になる、“これだけの理由”【マーケットのプロが解説】』を参照)。
三井住友DSアセットマネジメント株式会社