大企業と中小企業の給与差、さらに広がる!?
4月となり、いよいよ新年度がスタートした。学生はもちろん、サラリーマンも気分を新たにしているのではないか。ここ数年、コロナやそれに伴う景気低迷、急激なインフレなど、暗いニュースが続いていたが、ここにきて、大企業による新入社員への厚遇など、明るいニュースも入ってきた。
東京商工リサーチの『2023年度「賃上げに関するアンケート」調査』によると、2023年度の賃上げ予定企業 80.6%であり、実施企業は大企業が85.5%、中小企業は80.0%だった。
だが、「いよいよ、風向きがよくなってきた」などと考えるのは早計かもしれない。
たとえ大卒のサラリーマンでも、企業規模によって給与差は明らかに違う。大卒サラリーマンの平均給与(所定内給与額)は、中小企業(従業員30~99人/平均年齢43.9歳)で月35.1万円、年収で531.4万円。一方、大企業(従業員1,000人以上/平均年齢41.5歳)で月43.2万円、年収で740.4万円。月に8万円程度、年収では200万円程度という、明確な差がついている。
仮に、同じ大学で学んだ学生が、一方は大企業を、他方が中小企業を選んだとしたら、どの程度の「給与格差」となるのだろうか。
20代前半では月に1万円強、年に50万円弱に過ぎないが、20代後半になれば、年収で100万以上、40代にでは200万円以上、50代では300万円もの差へと拡大していく。
やる気と希望に燃え、自らの意思で選んだはずの職場でも、企業規模によってここまで差が開いてしまうと、中小企業のサラリーマンとしては、あまりにやるせない。
【大卒サラリーマン「大企業と中小企業」の月収差】
20~24歳:23.8 万円/22.1 万円
25~29歳:28.5 万円/25.1 万円
30~34歳:34.6 万円/29.1 万円
35~39歳:40.2 万円/33.4 万円
40~44歳:45.6 万円/36.3 万円
45~49歳:50.0 万円/40.0 万円
50~54歳:56.7 万円/42.1 万円
55~59歳:56.8 万円/42.4 万円
【大卒サラリーマン「大企業と中小企業」の年収推移】
20~24歳:359.4 万円/309.9 万円
25~29歳:498.6 万円/378.8 万円
30~34歳:606.7 万円/450.1 万円
35~39歳:714.6 万円/518.9 万円
40~44歳:792.8 万円/564.6 万円
45~49歳:853.6 万円/607.5 万円
50~54歳:971.2 万円/641.1 万円
55~59歳:962.5 万円/627.1 万円
出所:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より算出
※数値左:大企業(従業員規模1,000人以上企業)、数値左:中小企業(従業員規模30~99人企業)
40代が「最も残念な年代」なことが明らかに
振り返れば、この十数年、サラリーマンの給与事情は厳しくなる一方だった。『賃金構造統計調査』によると、2006年、大卒サラリーマンの月収(所定内給与額)の中央値は36万3,700円。そして2021年は33万5,600円。サラリーマンのちょうど真ん中の給与は、15年で2万8,000円も減少している。
さらに給与の中央値の推移を年齢別にみると、最も割を食った世代が浮き彫りになる。
給与中央値は、この15年で20代前半は1.2万円、20代後半は6,000円ほどアップしている。これは初任給の上昇によるものだ。しかし、30代では一転、減少傾向になる。30代では1.1万円、30代後半で4.3万円のダウン。そして現役世代で最大となるのが40代だ。40代前半ではなんと7.2万円のダウン、40代後半も6.5万円のダウン。氷河期世代の40代が「最も残念な年代」となっている。
さらに、40代前半の下位10%と上位10%の給与差に注目してみよう。
2006年には25万円ほどだったその差だが、2021年位は33.5万円に拡大している。最も残念な40代は、最も割を食った世代であり、しかも同世代間で、ここ15年「勝ち組」と「負け組」の差がさらに拡大していることがわかる。
この春は、初任給をはじめ、若年層を中心に引き上げるという企業が多い一方、中間層以上のベテランへの待遇について特に触れていない企業からは、「実力勝負」を迫る姿勢が見て取れる。割を食っている40代中堅社員たちは、新卒時の就職で苦しんだ挙句、賃上げの恩恵にも浴せないという厳しい状況に。「もう、我慢の限界」との声も聞こえてくるかのようである。
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