(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年2月24日から始まった、ロシアによるウクライナ侵攻。1年以上経ったいまも戦いは続き、ニュース等で惨憺たる戦況を目にします。しかし、開始前は「世界第2位の軍事大国」というイメージの強かったロシアですが、「実際には多くの点で弱体化している大国とは程遠い国家」と、元陸将の渡部悦和氏と井上武氏、元海将補の佐々木孝博氏はいいます。ウクライナ侵攻で露わになったロシアの「本当の姿」について、詳しくみていきましょう。※本連載は、渡部悦和氏、井上武氏、佐々木孝博氏の共著『プーチンの「超限戦」その全貌と失敗の本質』(ワニ・プラス)より一部を抜粋・再編集したものです。

ウクライナ侵攻はいま「第3段階」

露宇戦争は8月29日以降、第3段階「ウクライナ軍の南部地域および東部地域での反攻」に移行しています。ドンバス地方における戦闘は継続しているのですが、ウクライナ軍の当面の焦点は、南部(ヘルソン州、ザポリージャ州、クリミア半島)に移っています。

 

ウクライナ当局者は、「ウクライナの反攻作戦は、大規模な領土の即時奪還を目指すものではなく、南部のロシア軍と兵站(へいたん)を意図的に低下させるための計画的な作戦である」と慎重な表現を使っています。

 

ウクライナ軍は、高機動ロケットシステム・ハイマースなどの長距離火力による射撃により、ロシア軍の弾薬集積所などの補給拠点、司令部などの高価値目標、橋や鉄道などの交通の要衝、集中しすぎた部隊などを効果的に破壊しています。

 

実際の作戦の進展状況を分析すると、ヘルソン州のドニプロ川北岸に展開する2万人のロシア軍の退路を断ち孤立させ、これを徐々に包囲して撃破しようとしています。このヘルソン州での反攻がロシア軍に大きな影響を与え、ロシア軍は東部ドンバス地方の精鋭部隊を引き抜き、ヘルソン州に転用してしまいました。

 

東部戦線におけるロシア軍の配備の弱点を衝き、ウクライナ軍は9月6日に反撃を開始すると、瞬く間に戦略的要衝クピャンスクまで占領しました。その後はその戦果を南北に拡張し、ドンバス地方の要衝イジュームまでをも占領し、ほぼハルキウ州全体を奪還しました。

 

一方、ロシア軍は、ウクライナ軍の迅速な攻撃に慌てふためき、大量の兵器を残して撤退しました。これは「ハルキウ反攻作戦」として歴史に残る作戦となると思います。

 

この第3段階においては、ウクライナ軍がどこまでロシア軍の占領地域を奪還するかが注目されます。

 

ウクライナ軍の攻撃が順調に進捗すると、ロシア軍を打ち負かす局面に繫がる可能性があり、今後数ヶ月が戦争の帰趨(きすう)を決める重要な時期になります。

 

渡部 悦和

元陸上自衛隊 陸将

 

井上 武

元陸上自衛隊 陸将

 

佐々木 孝博

元海上自衛隊 海将補

 

※本連載は、渡部悦和氏、井上武氏、佐々木孝博氏の共著『プーチンの「超限戦」その全貌と失敗の本質』(ワニ・プラス)より一部を抜粋・再編集したものです。

プーチンの超限戦 その全貌と失敗の本質

プーチンの超限戦 その全貌と失敗の本質

渡部 悦和 井上 武 佐々木 孝博

ワニ・プラス

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