再婚しており、前妻とのあいだに子がいる家族
昨今は離婚、再婚は少なくはなく、親が亡くなると、前妻との子ども、前夫との子どもは、たとえ何十年も離れて暮らしても相続人になります。再婚した夫が亡くなると、相続人は妻と子ども、そして前妻との間にできた子どもです。法定相続分は妻が2分の1、妻との子ども4分の1、前妻との子ども4分の1です。たとえ、前妻の子どもと顔を合わせたことがなくても、連絡をとり、遺産分割協議をしなければなりません。
このケースも子どものいない夫婦と同様、前妻の子どもが法定相続分どおりの遺産分割を主張したら、妻とその子どもはその要求に応じる必要があります。夫の財産に現金はなくても、夫名義の自宅不動産があるならば、それを前妻の子どもと共有登記するか、売却をして代金を分けるしかありません。
そのため、再婚した夫による遺言書の作成は必須です。夫が生前に「自分の財産はすべて妻とその子ども〇〇に相続させる」という遺言書を作成すれば、前妻の子どもは遺留分のみの金銭しか請求することができません。せめてもう少し妻の子に財産を残したいのなら、生命保険を活用するとよいでしょう。
また、逆に不憫な思いをさせてしまった前妻の子どもに多めに財産を残したい、あるいは認知をしている非嫡出子に多めに財産を残したい、さらに認知をしていない子どもを認知して財産を残したいという場合も、遺言を活用することができます。
離婚、再婚をした人は、財産の金額を問わず、相続人への財産の分け方をよくよく考え、遺言書を作成することが重要です。
知的障碍の子をもつ家族
知的障碍の子どもの相続について、筆者のところにあった悲しい事例を紹介します。
夫が亡くなり、相続人は妻と長男、長女で、長女には知的障碍がありました。夫の遺産は、土地・建物の不動産が3,000万円、預貯金が3,500万円、生命保険金が2,000万円の合計8,500万円。相続税を算定すると225万円です。
通常ならば、妻が「小規模宅地等の特例」を使って相続すれば相続税は60万円に下がります。また、夫の財産すべてを妻が相続するとすれば、「配偶者の税額軽減」で1億6,000万円までは相続税がかからない特例があり、相続税は0円になります。
しかし、長女は知的障碍のため意思決定能力がなく、遺産分割協議ができないので、法定相続分どおりに分け、相続税を払いました。
この家庭の場合、夫は生前に、長女の面倒を見てくれる妻と長男に対し、財産を多めに分ける遺言書を作成するべきでした。遺言書があれば遺言書に従い、特例の利用も問題なく可能です。知的障碍者がいる家族は、ぜひ、遺言書の効果を知ってください。また、財産は自分が亡き後、障碍者の面倒を見てくれる人に多く残しましょう。
【知得コラム】終活ノートの記述は遺言にならない
終活ノートに自筆で財産の分け方を詳しく書き、署名・捺印をしたとしても、それに法的効力はありません。終活ノートに書かれた内容は、あくまでも家族に対する「お願い」に過ぎず、お願いが聞いてもらえるかどうかは、自分の死後は分かりません。
法的に有効な形で自分の遺志を示したい場合には、終活ノートとは別に、遺言書を作成する必要があります。
秋山 清成
秋山清成税理士事務所
税理士
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