お造りは「あっさり→こってり」の順で食べる
正式な陰陽五行説の順序はあるものの、現代ではお造りを食べるときは、「あっさり→こってり」と覚えておくのが一番無難です。
白身魚のような淡白な味わいのものから始め、青魚やマグロの赤身、トロなどは後にするイメージで食べていくと、先に食べたものの味が後に食べるものの味を邪魔せず、すべてをおいしく食べられるのです。
また、ツマ(大根の千切り、大葉、穂紫蘇など)はすべて、お刺身の合間に口をさっぱりさせるハーブのようなものと考えて、好きなタイミングに食べてかまいません。
大根の千切りは、ひと口に入るサイズにまとめ、お好みで醤油を少しだけつけて食べます。穂紫蘇は、醤油の香り付けのために醤油皿にしごいて落とす、それをお刺身と一緒に食べる、あるいは茎を持って実をかじる、いずれもOKです。
大葉をお刺身に巻いて食べるのもアリです。
「ワサビは刺身に直に乗せるもの」と思い込んでいる人は多いようですが、ワサビを醤油に溶くのもマナー違反ではありません。
ただ、いったん溶いてしまうと醤油がワサビ風味一色になるので、私のおすすめは、どちらかというと刺身にワサビを乗せる食べ方です。
こうしたほうが、魚の種類によってワサビをつけるかどうか、どれくらいつけるかを自分で加減できるので、最後まで醤油の香りを楽しみつつ、お造りをおいしく食べられるでしょう。
尾頭付きの魚は、「魚の構造」に従い、「魚の声」を聴く
尾頭付きの魚はハードルが高いと感じている人は多いと思いますが、怖がる必要はありません。いくつかコツを押さえておけば、誰でも美しく食べられます。
最大のポイントは「魚の構造」に従って食べていくこと。まずエラの脇にお箸を入れ、頭側から尾側へと順に食べていくと、きれいに身が取れます。
上側の身がなくなったら、次は下側の身を食べますが、このとき、魚をひっくり返してはいけません。
魚の頭を手で支えながら、お箸で尾をポキッと上に折って骨を下側の身からはがし、最後に頭も外して一緒にお皿の奥のほうによけます。すると下側の身だけが残るので、きれいに食べ進めることができます。
身から取り除いた小骨は、お皿の右奥にコンパクトにまとめていきます。そして、食べ終えたら改めてお皿の上を眺めましょう。もし散らかっていたらお皿の右奥にまとめます。
「手皿」は、みずから無作法の恥をさらすようなもの
片手をお皿のように添えて食べている人を、よく見かけます。
なぜ、そうしたくなるのかというと、お箸から食べものが落ちてしまいそうな気がするからでしょう。だとしたら、「私はお箸から食べものが落ちるような食べ方しかできないんです」と表明しているのと同じことです。
もし本当に手の上に落ちてしまったらどうするのでしょう。
現実問題として手から食べるわけにはいきませんし、お皿に覆いかぶさるようにして食べるのも美しくありません。落ちる先が手ではなくお皿ならいい、という話ではなく、そもそも「落ちるような食べ方をしていること」が問題なのです。
解決策は簡単です。
「お箸で持てる量」「自分の一口に入る量」を、ちゃんとわかっておくこと。そうすれば、適量を箸で取り、一口で食べることができます。
手で持てる器ならば、背筋を伸ばしたまま器を胸元まで持ち上げ、適量を取って食べましょう。
株式会社トータルフード代表取締役
小倉 朋子