PE投資の「ビンテージ・イヤー」共通点は?
大和総研調査季報(2022年秋季号)の「転換期にあるプライベート・エクイティ市場」リポートによると、2011~2020年の各年をビンテージ・イヤーとするPEファンド(バイアウト・ファンドとグロース・エクスパンション・ファンド)とVC(ベンチャー・キャピタル)ファンドの内部収益率(IRR)の10年間平均はバイアウト・ファンドが17.4%、グロース・エクスパンション・ファンドが20.3%、VCファンドが17.8%だった。
PE投資のビンテージ・イヤーは、金融・経済・社会的な危機がきっかけとなることが多い。
①新型コロナ・ウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を背景に2019年末以降のバイオ・テクノロジー/医薬品業界
②2007―2008年の米国サブプライム住宅ローン危機と投資銀行リーマン・ブラザーズ破たん後のIT(情報通信技術)・デジタル産業
③2000―2001年のインターネット・バブル崩壊とイスラム過激派による米国同時多発テロ事件以降の軍需・防衛産業
といった、時代や人々の要請に応じた投資先への傾倒が目立つ。
米国パランティア・テクノロジーズ社は、時代の要請に応じた良い例だろう。同社は2001年911テロ事件が勃発した後の2004年に創業し、人工知能(AI)を使ったビッグ・データ解析プラットフォームを展開する。
米国防総省(ペンタゴン)、中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)など、政府機関・非営利組織やバンク・オブ・アメリカ、ドイツ銀行、アクサなど大手民間企業を主要な顧客としている。
サイバーセキュリティ、社内不正監視、マネーロンダリング防止などリスク対策や、安全な車・航空機開発からテロ対策、新薬発見など、業務効率化という組織のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を後押しする、先進的プラットフォームを構築する世界的なソフトウエア企業に成長した。
ただ米国政府の軍事・諜報機関などへの依存度が高いビジネス・モデルには、当然ながら時の政権の意向によって命運が左右されるという明確なリスクを持つ。
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