備えあれば憂いなし…危機を見据え持つべき資産は?
「備えあれば憂いなし」――。資産保全というと富裕層向けの話だと思いがちだが、人生100年時代には、だれにでも予想外の危機が訪れるものだ。さまざまな危機に備えた資産を構築するには、どうすればいいのだろうか?
歴史を振り返っても、金融危機、国家の破たん、戦争・革命のほか、預金封鎖・ペイオフ、迫害・差別、天災、疫病、スタグフレーション、食料不足など、いろいろな危機が身近に起こり得る。
市場の暴落、金融機関・企業の倒産、景気後退などにともない、リストラ・失業、収入・貯蓄の減少、資産売却、病気など、リスクを事前に考慮しておくことは、将来への不安や懸念が増大し、負の連鎖に陥ることを防ぐうえで重要だ。
通常の不況時には、「キャッシュ・イズ・キング(現金は王様)」といわれ、現金は最強とみられることが多い。しかし、国・地域、民族、時代、社会・経済・政治情勢などによって対応策は異なるだろう。
紛争地には、必ずロレックスを持っていく…各国で行われる「リスクヘッジ」
たとえばギリシャで2009年頃に起きた経済・財政の破たん危機だが、同国ではドイツの高級車ポルシェ保有率が世界トップクラスだと報じられた。国家破たんとインフレ急伸に対する国民の防衛策の1つとなっているのだろう。
当時、英国金融大手バークレイズ証券の外債チーフストラテジストは、ギリシャに関して、ラテン民族の楽観的な気質からか、借金踏み倒しに心理的な抵抗が小さく、歴史上、何度も債務危機を経験していると指摘。資金の借り手よりも、むしろ貸し手の責任を挙げていた(つまりギリシャに金を貸したほうが悪いという見解だった)。
また中東やアフリカなどのテロ・紛争地帯へ向かう記者やカメラマン、医者などは、だれもが知っているロレックスなど高級時計を身に着けるようだ。万一、襲撃を受け、拘束された際に、身を守るための交渉材料として利用できるからだ。高級時計を狙われて襲われれば、本末転倒だが、いざというときに換金性の高いものを差し出して、命乞いができるという。
リセールバリューが高いブランド品は、世界中の多くの人々から普遍的な価値を認められているため、取引が成立しやすい。
一方、ユダヤ人は、歴史的にさまざまな国・地域で迫害を受け追放された経験を持つ。このため、簡単に持って逃げることができるダイヤモンドや金などを扱う貴金属業界に従事している人が多い。
米国ニューヨークのミッドタウンに位置するダイヤモンド街では宝石店が並び、ユダヤ教超正統派が黒ずくめの服装で闊歩している。同時にユダヤ人は、他人や国から奪われることがない高等教育へ積極的に投資を行い、金融業界や研究機関・大学などで働く人も多い。
「金」も危機に強い資産
また金は、一般的に「有事の金」と呼ばれ、危機に強い資産とみられている。今年に入り、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金価格は過去最高値を更新している。中国やインドなどでは、富の象徴として金の需要が強く、金消費国1位の中国、2位のインドの2ヵ国で2021年の年間世界金生産量の約半分を買い受けたと報じられた。
さらに世界中で中華街などを展開している華僑は、ビジネス・商売を通じて団結しているが、本土の中国共産党が土地の私有を認めず国有地のためか、海外では不動産投資が顕著なようだ。
不測の事態が起きた場合に備え、多種多様な投資先を勘案し、高値でいつでも換金できる普遍的な価値を持つ資産を構築することは、精神的・身体的な安心安全をもたらすのではないだろうか。