トランプ政権で加速する米国から他資産への投資先の多極化
――漁師は潮を見る。
漁師は、気象状況や潮の流れを見て漁場を決める。投資も同様で金融市場や相場の方向性を見て、大勢を見極めて判断を下す必要があるとの相場格言だ。
2025年に第2次トランプ政権が発足して以降、米国の関税・貿易政策を巡る混乱が世界経済の懸念材料との見方が強まり、金融市場では3月半ばからリスク回避の動きが広がった。保護主義の台頭を背景に、米中の覇権争いが再び激化する兆しも浮上している。
世界経済が混沌とするなか、運用資金は、これまでの米国資産への一極集中からその他の資産クラスへ多極化の流れが加速している。
RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング債券部門最高投資責任者(CIO)は3月13日、「グローバル経済と金融市場の展望」と題して都内で講演し、トランプ政策による米ドル相場への影響は強弱入り混じるとしながらも、
「アセット・アロケーションの観点からいえば、米国離れの動きが出ている。中央銀行の準備高に占める米ドル比率が低下している」と説明し、その他の通貨・債券・現金などへの分散が加速する可能性を挙げた。
また、「米国株から欧州株へのローテーションも起きている。特にテスラ株などが売られた。欧州の金融社債は引き続き割安だ。投資家からの強い需要が追い風となっており、投資適格(IG)社債では、ユーロ建てが米ドル建てをアウトパフォームしている」とも述べた。
従来の戦略が通用しなくなる、潮目が変わる時期には、新たに有望な投資先を模索しながら、慎重かつ機敏な投資姿勢が求められるだろう。
今後の運用戦略は?
今後の運用戦略として、RBCブルーベイ・アセット・マネジメントは、長期的には債務水準の高止まりを背景に、米国と欧州のイールドカーブ(利回り曲線)はスティープ(傾斜)化に向かうと予想しながらも、「最近の金利低下を踏まえ、金利デュレーションはショート(短期)を選好」している。
一段と米金利が低下すれば、ショート(売り建て)・ポジションの投資機会を見込んでいる。さらに日本国債のショート(売り建て)・ポジションを解消し、割安な日本円に強気の見方を示した。
このほか、レバノンやベネズエラなど一部の新興市場(EM)ディストレスト債など幅広い投資機会を見込んでいる。
