損益計算書の重要比率(収益性・成長性を見る)
損益計算書からは、企業の収益性と成長性を読みます。
◆(1)企業の収益性(総資本経常利益率)
例えば金融機関の行職員が、融資の返済が継続的に可能であるかを見るには、企業の収益性の指標を読むことは欠かせません。
収益性の指標には、売上高と利益に着目した売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率等がありますが、本書では総資本経常利益率に着目します。
総資本経常利益率は、貸借対照表における投下総資本の合計で、どれだけの経常利益を生み出したかの指標です([図表4-1][図表4-2])
特にこの指標に着目するのは、経常利益が企業の財務活動も含めた事業活動による利益であること、分母と分子に売上高をかけることによりさらに深掘りができるからです。
総資本経常利益率の平均値は、業種によって大きく異なります。全産業のおおよその目安は4〜5%といった水準です。
参考までに業種のおおよその目安をあげますと、最も数値が高いのが自動車業で8%台、一方低いのは飲食業で2%前半といったイメージです。
その他の業種では、製造業5%台、小売業4%前後、不動産業3%前後、情報通信業7%台といったイメージです。
総資本経常利益率は、売上高をかけることにより、「総資本回転率」と「売上高経常利益率」に分解することができます。分解した結果、総資本回転率に問題があれば資産の効率性が悪いことが想定され、売上高経常利益率が問題であれば収益率が悪いことを意味します。
収益性の指標を読むには、過去の流れから将来を予測する視点、同規模企業の業界平均との比較を行うことが重要となります。
◆(2)企業の成長性
企業の成長性の分析は、過去と比較してどうかという分析になります。売上高の増加率(売上高増加率)と各利益段階での増加率(粗利益増加率、営業利益増加率、経常利益増加率)を見るのが一般的です([図表5-1][図表5-2])。
黒木 正人
黒木正人行政書士事務所
行政書士・宅地建物取引士・ファイナンススタイリスト